患者が語る 糖尿病と一生付き合う法

1日30回グルコース確認…こまめな測定にはマイナス点も

数値に振り回されてしまう
数値に振り回されてしまう

 目下のところ、低血糖で救急搬送されるような事態は基本的に回避できている。それというのも、例の「いつでもグルコース値を測れる最新式測定器」を最大限に活用しているからだ。

 現在僕は、平均して1日に30回はグルコース値を測定している。起きて活動している時間が16時間とすれば、ほぼ30分に1度の頻度だ。その中で少しでも低血糖の兆候があればすぐさま対処しているので、意識を失うまで血糖値を低下させるべくもないのだ。

 ただ、こまめに値をモニターできることには、良し悪しな面もある。

 グルコース値が高めで、しかも急激に上昇しているようなら、やはり気になってインスリンを足し打ちしてしまう。放っておけば途方もないほど高い値に達することがあるからだ。ところがその時、足し打ちしたインスリンの量が多すぎると、何時間か後に今度は低血糖になってしまう。それを元に戻そうとして補食すると、今度は補食の量が多すぎて、またグルコース値が許容の範囲を超えて上昇してしまう。そんな繰り返しに追われ、一体、何をやっているのかと自分でもあきれることがある。

 インスリンの効きは、体調などに応じて刻々と変化する。「これだけ打てばこれだけ下がるはず」とか「これだけ食べればこれだけ上がるはず」といった予想は、立てられるようで立てられない。あくまでその時次第なのだ。

 そんなことは、これまでの経験から身に染みてわかっている。それでも、なまじ手軽にグルコース値を測れる装置などを持っていると、ついちょくちょく測り、それにいちいち踊らされてしまう自分がいる。

「あまりストイックにならないように。血糖値をいい範囲に収めるためだけに生きてるわけじゃないでしょ?」

 主治医からはそう諭されるし、もっともだとも思う。せめてもう少し、おうようになれないものかと。しかしそれも性格なので、なかなか改められそうにない。

平山瑞穂

平山瑞穂

1968年、東京生まれ。立教大学社会学部卒業。2004年「ラス・マンチャス通信」で日本ファンタジーノベル大賞を受賞。糖尿病体験に基づく小説では「シュガーな俺」(06年)がある。

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