お酒と健康 8つの疑問

医師がよく言うお酒の「適量」 その根拠となる研究とは?

かんぱ~い!
かんぱ~い!(C)PIXTA

 お医者さんは「飲むなら適量」と言いますが、お酒は飲み始めれば飲み足りないか、飲み過ぎるかのどちらか。ちょうどいいなんてありません。お酒の適量って何ですか?

 お酒を飲み過ぎるとさまざまな病気になります。お酒の適量とはお酒で健康を害さない、安全な酒量をいいます。その数値は飲酒量と総死亡率の関連を調べた研究からはじき出されることが多いようです。

 例えば飲酒習慣のある健康な人のその後10年余りの死亡状況を調べた32の研究を分析したものがあります。総対象者数は90万8132人、観察期間中に亡くなった人は8万6941人です。研究には日本人を対象とした研究が3つ含まれています。

 その結果から導き出された曲線は、その形から「Jカーブ」と言われ、1日に純アルコール量7グラム(日本酒0・3合)を取る人の総死亡率が最も低いものでした。それを超えると死亡率は上昇に転じ、1日40グラムでお酒を飲まない人と同じ死亡率となり、それ以降は飲酒例に比例して死亡率は高くなります。

 つまり、この研究に限れば1日のアルコール摂取量40グラムが健康を害さない上限の酒量ということになります。ですからお酒を飲まない人より総死亡率が低いこの数字が、お酒の適量といえるのかもしれません。

 しかし、これは外国のデータ主体の数字です。日本では1990年からスタートした「多目的コホート研究」があります。全国11地域、14万人余りを対象にした研究です。

 食事や運動、喫煙などの生活習慣が病気にどう関連するかを調べる研究です。そこからはじき出された結果が、「1日に取る純アルコール20グラムが適量」となったのです。

 ただし、病気によっては少ししかお酒を飲まないのに罹患率が跳ね上がる病気があります。高血圧脂質異常症、脳出血、乳がんなどです。逆に少ししか飲まなければ、まったく飲まない人より発症リスクが低くなる、心筋梗塞や狭心症といった虚血性心疾患、脳梗塞、2型糖尿病なども存在します。

 Jカーブは少量飲酒でリスクが低くなる疾患によるものが大きいと考えられます。

(国際医療福祉大学病院内科学・一石英一郎教授)

関連記事