Dr.中川のみんなで越えるがんの壁

misonoさんの夫は睾丸摘出 胚細胞腫の治療と子づくりは?

(Highsideの公式HP)

 今回のポイントは、もうひとつあります。網走のライブから戻っての精密検査の結果をこう言われたそうです。

「精巣がんによる胚細胞腫瘍が胃の下にあります。直径およそ15センチ。とても大きいです」

 胚細胞腫瘍は、精巣・卵巣などの生殖器と体の中心線に沿った部分、たとえば胸の中(縦隔)、お腹の中(後腹膜、仙骨部)、脳(松果体、神経下垂体部)などにできやすい悪性腫瘍です。いろいろな内臓に分化することができる能力を持つ原始胚細胞という細胞が悪性腫瘍になったものと考えられます。

 10代から30代、特に20代に多いのが特徴。多いといっても、「このがんとして多い」のであり、がん全体では男性だと10万人に3人程度で、まれながんです。

 小児に発生するケースでは、体の中心部が原発になることが半数なのですが、20代の青年期は生殖器が原発になることがほとんど。特に男性は、精巣発生が9割を占めています。

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中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

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