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眼圧はアテにできず…緑内障の発見は眼底と視野をセットで

緑内障検査のようす
緑内障検査のようす(C)日刊ゲンダイ

 会社に勤めている人は企業健診が義務づけられています。その形態はさまざまで、人間ドックのような充実した健診もあれば、簡易な健康診断で済ますところも珍しくありません。後者の場合、注意したいのが目の検査です。

「車を運転していると、左の路地から出てくる車や自転車に気づくのが遅れることがあって、ヒヤッとしました」

 中性脂肪値が高く通院されている上野裕二さん(52=仮名)は、受診後の雑談でそうおっしゃいました。すでに老眼が始まっていて、メガネは遠近両用の老眼鏡。メガネをかけた状態で測る矯正視力は右が0.8、左が1.0で、見え方は特に問題ないそうですが、私は話の内容が気になりました。

 詳しくうかがうと、会社の健診で目の検査は視力のみ。

 眼圧(正常値は10~20㎜Hg)や眼底(視神経の異常を調べる)、視野の検査を受けていなかったのです。

 緑内障という目の病気があります。視神経が圧迫されて萎縮する病気で、進行すると視野が狭くなり、最悪の場合、失明に。中途失明原因のトップを占める厄介な病気です。

 40歳以上では20人に1人がこの病気とされています。上野さんの年齢やお話から、これが疑われたのです。

 目の中の液体の流出路が詰まることから、目の中の水圧=眼圧が上昇。それが、視神経圧迫の原因のひとつで、かつては眼圧の異常が緑内障を見つけるための指標でした。

 ところが、岐阜県多治見市で行われた「多治見スタディー」から、全緑内障患者のうち眼圧が正常な人が70~80%に上ることが明らかになったのです。それが、正常眼圧緑内障で、眼圧はほとんど当てになりませんし、上野さんがそうだったように、初期は視力に影響しません。眼科の受診をお勧めした次第です。

 次の定期診断にいらしたとき、ホッとしたように言われました。

「ご指摘通り正常眼圧緑内障でした。でも、幸いすぐに治療すれば、失明せずに済むとのこと。ありがとうございます」

 緑内障は初期だと、自覚症状に乏しいものの、運転していて見え方がおかしい(視野狭窄)、目や頭が重い、あるいは、人にぶつかりやすくなった、距離感がおかしい、つまずく、文字を読み飛ばすことが増えたといった症状を見せることがあります。症状があってもなくても、40歳以上は毎年、眼圧や眼底、さらに視野の検査を受けるのが無難でしょう。

梅田悦生・赤坂山王クリニック院長

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