「妻の亡きあとに、数年かけて彼女のほとんどの文章をパソコンでテキストファイルに打ち出して整理しました。5000枚にのぼる妻が撮った猫の写真もCD―Rに落としました。それは妻の記憶の追体験でもあったし、私の気持ちの整理でもあった。そして本にしたのは、自分へのケジメの意味もありました。こういう世界に生きる者としては、書くことによって表現したいという気持ちもありました。でも、もともとは妻のことを知っているごく親しい人たちに向け、『妻はこんな感じで生きてきたんですよ』と伝えたかったのです」
佳江さんがノートに残した文章にはこんなものがある。
2006年4月4日
歩くとゆれて少し痛い。電車への移動など人にぶつからないよう注意。ショールの下で押さえつつ、あまり眠れず
まだ、ゆれと重みがかかると傷む。乳首とその周りがしびれて感覚が変
がん発症の妻にしてあげた10のこと