風邪の原因はウイルスではない…に専門医が科学的に反論

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 風邪を引いたら抗菌剤(抗生物質)が処方されていたのは、過去の話。現在は、「風邪の原因はウイルスで、抗菌薬は効かない」が定説だ。厚労相が2017年に出した抗菌薬の使用指針「抗微生物薬適正使用の手引き」で、「抗菌薬を使わないことを推奨」としたこともあり、風邪に抗菌薬が処方されることはぐっと減った。

 ところで、本当に「風邪の原因はウイルス」と言えるのだろうか? 疑問を抱き、過去に発表された国内外の論文を調べたのが、JCHO東京メディカルセンター呼吸器内科の徳田均医師だ。結果は意外なものだった。

「成人の感冒の原因をウイルスであると示す信頼度の高い研究は実は非常に少ない のです。気管支炎を含む風邪全体に話を広げても、ウイルスの検出頻度が高いとの報告はいくつかありますが、それらの研究では細菌についてはあまり調べられていません。一方、細菌が検出されるとの報告もあり、ウィルスと細菌をバランスよく研究することが必要ですが,そのような研究はほとんどありません。つまり成人においては、かぜの原因は実はあまりよく判っていない,というのが正しいのです」

 特に高齢者では風邪が重大病につながり、命取りになるケースもある。風邪の原因が科学的にはっきり確定されていない現状から、徳田医師は風邪であっても必要と判断されたら抗菌薬を出すことがある。

 以前も、こんなケースがあった。60歳代の女性で、風邪の後、咳が2カ月間続いていると訴える。喫煙歴あり。しかし、これまで何らかの呼吸器疾患は指摘されていなかったため、ほかの医療機関では「風邪です。抗菌剤は効きません」と告げられたという。
 
「胸部単純X線写真では異常は見出されませんでした。しかし、CTで肺気腫と軽症の間質性肺炎が見つかったのです。これが風邪が長引いていた原因でした。この女性は、昨年、一昨年と風邪を引いた時も、咳が長く続いていた。私は、風邪の患者さんには問診で過去の症状を聞き、『以前も咳が長く続いた』などと聞けば、抗菌薬を最初から短期間処方します。隠れた肺の基礎疾患があることが疑われるからです。彼女も最初から抗菌薬を服用していれば、2カ月間苦しむこともなかったでしょう」

 もしかして、と思ったら、担当医に過去の症状も訴え、判断を仰ぐべきだ。

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