生活と健康 数字は語る

がんとの関連が報告されているタイプも…降圧薬の副作用

写真はイメージ
写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 降圧薬は最も安全な薬のひとつですが、それでもさまざまな副作用があります。「Ca拮抗薬」のむくみや顔面のほてり、「利尿薬」の低ナトリウム血症、低カリウム血症、「ACE阻害薬」の咳などです。しかしこれらの副作用は、他の降圧薬への切り替えで対応できますから、症状が出たところで対応可能です。

 それに対して一度起こると取り返しがつかない副作用はそういうわけにはいかず、注意が必要です。なかでも降圧薬との関連が繰り返し指摘されるのが、がんとの関連です。

 ACE阻害薬、ARBの2つについて、がんとの関連の報告があります。ARBについては2010年にランダム化比較試験のメタ分析という信頼性の高い方法で検討されており、新たながんが100から108、つまり8%増えるという報告があります。ただ、この後の研究でがんの増加はないという結果も報告され、今ではあまり問題にされなくなっています。

 さらに2018年になってACE阻害薬と肺がんの関係も報告されています。この研究は100万人近い高血圧患者を解析し、ARBに比べてACE阻害薬で肺がんが100から114に増えるという結果を示しています。ただACE阻害薬には咳の副作用のために肺がんのチェックがなされるために肺がんが多く見つかっているだけで、薬の直接の影響ではないかもしれません。

 もちろん降圧薬は他に多くの選択肢がありますから、がんが心配、肺がんが心配という人は、ARB、ACE阻害薬を他の降圧薬に変更してもらうのも悪くはないと思います。

名郷直樹

名郷直樹

「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長、自治医大卒。東大薬学部非常勤講師、臨床研究適正評価教育機構理事。著書に「健康第一は間違っている」(筑摩選書)、「いずれくる死にそなえない」(生活の医療社)ほか多数。

関連記事