お酒と健康 8つの疑問

お酒を飲む量が多いほど乳がん発症リスクは上昇する

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【Q】乳がんが急激に増えている背景に、女性の飲酒が関係していると聞きました。お酒を飲み過ぎると乳がんの発症リスクが高くなるって、ホントですか?

【A】残念ながら本当です。さまざまながんでアルコールが発症リスクを高めるといわれていますが、乳がんもそのひとつです。国立がん研究センターの2018年の乳がんの罹患者数予測は、8万6500人。一方、08年の乳がん罹患者数は5万9389人です。10年間で1.4倍に増えた計算です。目立つのは40歳以上で、特に閉経女性の乳がんです。

 世界がん研究基金、米国がん研究協会の見方もアルコールによる乳がんの発がんリスクは5段階のうち、上から2番目の「ほぼ確実」としています。国立がん研究センターの「多目的コホート研究」でもお酒を全く飲まない人と、週にアルコール150グラム(180㏄の度数14%の日本酒6合)より多く飲む人を乳がん発症率で比べた場合、後者の方が1.75倍多いという結果を報告しています。

 ただし、なぜ、お酒を飲むと乳がんになりやすいのか、ハッキリした理由は分かっていません。アルコールを体内で分解したときの中間代謝物であるアセトアルデヒドの毒性は体が男性より小さい女性に強く出るからではないか、アルコール代謝による酸化作用があるのではないかなど、さまざまな理由がいわれていますが、決め手になるような報告はありません。ですから、どのくらいの酒量なら安全かということも正直、分かってはいません。

 よく1日1合程度の日本酒、ビール中ビン1本、ワイン2杯が適量などといわれますが、それは疫学研究からはじき出された数字で、個々人に当てはまるものではありません。よほど過剰に飲まなければ大丈夫ともいえるのです。

 ただ、乳がんの増加は閉経後に目立つことから、お酒よりも肥満に注意が必要です。本来、女性ホルモンをエサにする乳がんは閉経後に減少するはずですが、逆の結果になっているのは乳腺の脂肪組織になる酵素が原因といわれています。この酵素が男性ホルモンの一種であるアンドロゲンを女性ホルモンに変換する働きがあり、太っている人はその働きが活発だからです。

 乳がんが気になる人は、太らない程度に、常識的な範囲で飲むことが大切ということでしょうか?

(国際医療福祉大学病院内科学・一石英一郎教授)

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