お酒と健康 8つの疑問

アルコール依存症に関係する遺伝子が次々と発見されている

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

【Q】父親がお酒大好きで、酔っぱらって暴れる姿を見て育ちました。自分もお酒を飲むとああなるのか、と思うと心配です。アルコール依存症に関係する遺伝子はあるのですか?

【A】アルコール依存症とは飲酒が習慣となり、やめると禁断症状が起き、精神的にも肉体的にもお酒の依存が見られる状態をいいます。アルコール依存症の診断基準にはWHO(世界保健機関)が作成した「ICD―10」(国際疾病分類第10版)によるアルコール依存症診断ガイドラインがあります。その中には「明らかに有害な結果が起きているにもかかわらず飲酒をする」「禁酒、減酒の際に離脱症状がある」「飲酒したいという強い欲望・強迫感がある」などの6項目が書かれていて、そのうち3項目以上が過去1年間に1カ月以上続いたか、繰り返した場合などにアルコール依存症と診断されます。

 よく、アルコール依存症は「お酒をやめる意志が弱い人」「だらしない人」が発症するなどと言う人がいますが、そうではありません。あくまでも病気であり、お酒が切れると離脱症状が出るため、それがつらくて飲んでしまうのです。

 実はアルコール依存症は関連する遺伝子が次々と見つかっています。

 例えば、「オピオイド受容体遺伝子」です。

 オピオイドは麻薬性鎮痛薬やその関連合成鎮痛薬などを指す言葉ですが、麻薬=オピオイドではありません。中枢神経や末梢神経に存在するオピオイド受容体への結合によりモルヒネに似た働きをする物質を言います。

 こうしたオピオイド物質は、植物由来のものもあれば化学的に合成されるものもあります。また、エンドルフィンのように生体に危機が迫った時に体内で作られる内因性のオピオイドもあります。

 オピオイド物質は鎮痛効果を持つと同時にその報酬・依存作用により、依存症の原因になり得るといわれています。

 実際、オピオイド受容体が変異すると、アルコールによる快楽が続くなどして、アルコール依存症を発症しやすくなることがわかっています。

 また、最新の医療では、精神の安定や睡眠などに関連する神経伝達物質のセロトニンに関連するある受容体がアルコール依存症に関係していると注目されています。この受容体が壊れると、アルコールと水の区別ができなくなり、アルコール依存症の症状が出る、ともいわれています。

 いずれも、その理論を応用してアルコール依存症の薬が作られ、一定の効果を上げているようです。

(国際医療福祉大学病院内科学・一石英一郎教授)

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