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塗るだけでOKの男性用避妊薬 ついに臨床実験スタート

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 これだけ医療が進化しても、男性の避妊といえば古き良きコンドームかパイプカットのみ。一方、女性用も50年以上変わらない避妊ピルが主流で、人によっては吐き気や頭痛、体重増加から性欲減退まで副作用も多く、「女性ばかりがこうしたリスクを負うのは不公平」という声がずっと前から上がっていました。

 しかし2019年、ついに効果的な男性用の避妊アイテムの登場に一歩近づくかもしれません。

 アメリカ国立衛生研究所では昨年11月、男性向けの画期的な避妊薬の臨床実験に参加を希望する400組の男女カップル募集を開始しました。「NES/T」と呼ばれるこのジェルは、プロゲスチン化合物を含むセジェステロン酢酸(商品名ネストロン)と、男性ホルモンのテストステロンからなり、これを1日1回男性の肩や背中に塗ることで体内に吸収され、プロゲスチンが精巣内のテストステロンの製造を妨げて、精子の数を限りなくゼロに近づけるというもの。

 なぜジェル状なのか? その理由は、ネストロンは経口で摂取しても体内に吸収されず、テストステロンも1日で体外に排出されてしまうため、ジェル状がベストだといいます。塗り始めて精子の数が十分低くなった時点で、女性がピルをやめても妊娠しなくなるとのこと。また、女性用のピルは1日でも飲み忘れると妊娠のリスクが高まるのに対し、このジェルは1回塗り忘れてもそれほど大きな影響はないそう。さらに、気になる性欲低下のリスクも、テストステロンを同時に摂取することで防げるといいます。

 アメリカでは、1年間の妊娠の4割もの「予定外」の妊娠が報告され、女性や赤ちゃんの健康への影響が懸念されています。この臨床実験が全て終了するのは2021年9月ですが、成功すれば避妊に画期的な変化をもたらしそうです。

シェリー めぐみ

シェリー めぐみ

NYハーレムから、激動のアメリカをレポートするジャーナリスト。 ダイバーシティと人種問題、次世代を切りひらくZ世代、変貌するアメリカ政治が得意分野。 早稲稲田大学政経学部卒業後1991年NYに移住、FMラジオディレクターとしてニュース/エンタメ番組を手がけるかたわら、ロッキンオンなどの音楽誌に寄稿。メアリー・J・ブライジ、マライア・キャリー、ハービー・ハンコックなど大物ミュージシャンをはじめ、インタビューした相手は2000人を超える。現在フリージャーナリストとして、ラジオ、新聞、ウェブ媒体にて、政治、社会、エンタメなどジャンルを自由自在に横断し、一歩踏みこんだ情報を届けている。 2019年、ミレニアルとZ世代が本音で未来を語る座談会プロジェクト「NYフューチャーラボ」を立ち上げ、最先端を走り続けている。 ホームページURL: https://megumedia.com

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