医師が提言 寝たきりなし「ピンピンコロリ」の理想と現実

ピンピンコロリが理想だが…(C)PIXTA

 ピンピンコロリに次いで理想とされる老衰死でも寝たきりは避けられない。「噛めなくなる」「飲み込めなくなる」高齢者は、BMI(体格指数)が亡くなる5年ほど前から落ちていき、2年ほど前になると不可逆的・加速度的に落ちていく。食事も亡くなる1年くらい前から減っていき、食べても栄養が体格を維持することにつながらなくなる。筋力が衰えるので普通の生活は困難になる。

 そもそも現時点で寝たきりにならないための努力といっても確立した方法は存在しない。少なくとも医学的コンセンサスを得たものはないのだ。

 にもかかわらず、自由に動けて意思を伝えられる、残り少ない時と大切なお金を使ってピンピンコロリという奇跡を目指し生活するのはバカバカしいのではないか、と名郷院長は言う。

「私は、子育てや仕事を介して社会的責任を果たし終えた人たちは、残りの人生を自分の好きなこと、輝けることに費やすべきだと思います。旅行でも絵でも好きなことをすればいい。どんなに立派な人であってもいつかお風呂もトイレも食事も他人の介助なしにはできなくなります。おむつが手放せなくなり、自分の意思すら伝えられなくなるのです。亡くなる前の一時期はそれが自然だと今から覚悟すべきです」

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