天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

薬の進歩と適正使用がヒトの寿命を30年延ばした大きな要因

順天堂大学医学部付属順天堂医院の天野篤院長(C)日刊ゲンダイ

■かかる医師によって患者の寿命は20年変わってくる

 いまは「科学的根拠(エビデンス)に基づいた医療」=「EBM」(エビデンス・ベースド・メディスン)の時代で、医師は勉強してガイドラインを重視する治療を行うようになっています。30年ほど前は80年だった寿命が100年まで延びようとしているのは、EBMが大きな要因といえます。

 そう考えると、EBMが当たり前になる以前に大学の医学部を卒業し、ある程度の臨床経験を積んでから開業して独自の判断や耳学問で治療を行っている医師にかかった場合、その患者さんは30年ほど前の寿命しか持てないということです。勉強を続けて新しい知識をアップデートしていない医師と、都市部など競争が激しい地域で進んだ医療を実践している医師とでは、かかる患者さんの寿命が20年違ってくるといえるのです。

 進歩している医療の技術はさまざまありますが、中でも薬は患者さんにとっていちばん身近な“医療”といえます。われわれの寿命を規定する因子の中で多くを占めているのは、細胞の突然変異が関係しているがんを除けば、心臓や血管のトラブルによる突然死や、生活習慣によって起こる全身性の病気です。糖尿病、高血圧、高脂血症が代表的なものですが、それらの病気は薬である程度は管理できるようになっています。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

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