それを避けるために妻が一計を案じ、「インスリンを打ってから食事が始まるまでの間は、僕は妻の目の届くところにいるようにする」というルールができた。そうすれば、僕に低血糖の兆候があるかどうかを、妻が食事の準備をしがてら見守ることができる。僕が低血糖でおかしくなっているかどうかは、会話での受け答えでも分かるし、妻に言わせれば、表情を見るだけでもだいたい分かるのだそうだ。顔の筋肉がこわばっている感じがするのだという。
それからはインスリンを打った後、僕は食卓に移動し、それまでしていたことの続きをするようになった。そして妻に「低血糖っぽいよ」と指摘されるなり速やかに補食して、それ以上の悪化を食い止めるのである。
もちろん、それでも万全というわけにはいかない。妻だって、料理中には目が離せないこともある。低血糖のサインに自分でも気づけるように、僕もさまざまな工夫をした。それについては次回に譲ろう。
患者が語る 糖尿病と一生付き合う法