患者が語る 糖尿病と一生付き合う法

インスリン投与から食事までの30分で低血糖起こし意識障害

妻が作ってくれたルール

 それを避けるために妻が一計を案じ、「インスリンを打ってから食事が始まるまでの間は、僕は妻の目の届くところにいるようにする」というルールができた。そうすれば、僕に低血糖の兆候があるかどうかを、妻が食事の準備をしがてら見守ることができる。僕が低血糖でおかしくなっているかどうかは、会話での受け答えでも分かるし、妻に言わせれば、表情を見るだけでもだいたい分かるのだそうだ。顔の筋肉がこわばっている感じがするのだという。

 それからはインスリンを打った後、僕は食卓に移動し、それまでしていたことの続きをするようになった。そして妻に「低血糖っぽいよ」と指摘されるなり速やかに補食して、それ以上の悪化を食い止めるのである。

 もちろん、それでも万全というわけにはいかない。妻だって、料理中には目が離せないこともある。低血糖のサインに自分でも気づけるように、僕もさまざまな工夫をした。それについては次回に譲ろう。

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平山瑞穂

平山瑞穂

1968年、東京生まれ。立教大学社会学部卒業。2004年「ラス・マンチャス通信」で日本ファンタジーノベル大賞を受賞。糖尿病体験に基づく小説では「シュガーな俺」(06年)がある。

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