専門医も大きな一歩と…「掌蹠膿疱症」の最新治療薬とは

水虫だと思っていたら…
水虫だと思っていたら…(C)PIXTA

 掌蹠膿疱症は、膿疱と水疱が手のひらや足裏などに繰り返しできる病気だ。水疱の中央に小さな膿疱があるのも特徴。見た目から「うつる」と思われがちだが、間違いだ。水疱は無菌性で、人にはうつらない。

「掌蹠膿疱症の治療は、大きな一歩を踏み出した」

 こう言うのは、掌蹠膿疱症治療に詳しい日本大学医学部皮膚科の照井正教授だ。昨年11月、掌蹠膿疱症の治療薬として、日本で初めて生物学的製剤が承認された。これまでの治療で効果が十分に見られなかった掌蹠膿疱症にも効果を発揮する。

 複数の皮膚科や大学病院などで約30年間治療を経験してきたある患者はこの生物学的製剤の治験に参加。過去には歩行困難になるなど日常生活に大きな支障を来すほどの症状を体験し、どの治療を始めても“大波小波(症状がやや治まっても、また悪化する)”だった。しかし、生物学的製剤を使い始めてからは“波”がゼロ。「症状がほぼほぼない、という状態になった」と話す。

■同様の新薬が今後も続々承認の見込み

「海外では新たな治験も行われています。今後、今回の薬と同様に効果の高い生物学的製剤がいくつも承認される見込み。治療の選択肢はもっと増えるでしょう」(照井教授=以下同)

 だから、掌蹠膿疱症が疑われる症状がある人はもちろん、従来の治療法が効かなかったからと良くなることをあきらめていた人は、掌蹠膿疱症を多数診ている皮膚科を今、受診すべきだ。

 掌蹠膿疱症の皮膚症状は、冒頭で述べた通りだ。水虫と見間違うケースがあるかもしれないが、真菌のチェックで鑑別診断ができる。手のひらや足裏などに水疱ができる「汗疱」という病気は、症状が掌蹠膿疱症と非常に似通っているため鑑別診断が難しい。しかし、膿疱がある、または水疱の中央に膿疱があるかないかで見分けがつく。“ある”なら、掌蹠膿疱症だ。

 一方、見落としがちなのが骨関節症状。

「患者の4~30%で骨関節の炎症を伴うといわれ、中等症以降の患者が多い施設では50%近くに見られます。主に胸肋鎖関節の症状で、前胸部が痛む。心臓病だと思う人もいます。単純X線検査では、初期の病変を見逃しやすく、炎症を反映しやすい骨シンチ検査が有用です」

 骨関節症状が進むと、骨破壊で歩けなくなることがある。研究では、重症度と関係なく、骨関節症状が生活の質(QOL)を下げることが明らかになっている。

「骨関節症状が出始めたら早期に治療を開始することが重要です」

 これまでの治療は、掌蹠膿疱症の発症にかかわると考えられている「扁桃炎や歯性病巣など病巣」「喫煙」「金属アレルギー」を取り除き、外用ステロイド薬や外用活性型ビタミン、紫外線療法、レチノイドが用いられる。しかし、ステロイド外用薬などの薬は骨関節症状への効き目はなく、中等症から重症例の患者は、症状コントロールが非常に難しかった。

 今回承認された生物学的製剤「グセルクマブ(商品名トレムフィア)」は、従来薬で効果が十分に認められない人に適用される。しかも効果は高く、先に紹介した30年来の患者も「今後、生物学的製剤を使う予定」とのことだ。

 照井教授によれば、掌蹠膿疱症は薬の開発が遅れていて、研究者が国内外で少なかった。しかし、東京オリンピックが開かれる頃には、その状況が変わっていることが期待される。

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