人生100年時代の健康法

老後の生活設計の参考にすべき 「平均余命」とは何か?

40、50代は違いなし
40、50代は違いなし(C)日刊ゲンダイ

 老後を考える上で、平均寿命はあまり参考にならないという話をしました。平均寿命を信じると、自分の老後の長さを過少評価してしまいます。そのまま老後設計をしてしまうと、生活資金が途中でショートする危険すらあるのです。

 ではどうすればいいのでしょうか。

 平均寿命とよく似た言葉に「平均余命」があります。各年齢において、平均してあと何年寿命が残っているかを示した数字です。これを参考に老後設計をすればいいのではないでしょうか。

 2017年における男性の平均寿命は81.09歳でしたが、50歳の人の平均余命は32.61年でした。つまり、50歳男性は平均して82.61歳まで、平均寿命よりも1.52歳長く生きることになります。

 平均余命の計算方法は、平均寿命と基本的に同じです。ただしベースとなる年齢が違います。いま、50歳で生存している男性が10万人いるとしましょう。この人数に、いま分かっている各年齢の死亡率を掛け合わせると、51歳までに254人、52歳までに277人といった具合に亡くなっていきます。そして生存数が0になるまでシミュレーションを続けていって、余命の平均を計算するのです。

「年齢+平均余命」は平均寿命よりも長くなります。平均余命の計算は、その年齢で生存している人だけを対象とするからです。すでに亡くなっている人は、計算に含まれません。当然、その分だけ長く出るのです。

 同じ理屈で、年齢が高いほど「平均余命+年齢」が延びていきます。60歳で存命中の男性の平均余命は23.72年(83.72歳まで)、70歳では15.73年(同85.73歳まで)、80歳では8.95年(同88.95歳まで)といった具合です。

 逆に年齢が下がると「年齢+平均余命」と平均寿命の差が減っていきます。40歳男性では42.05年(同82.05歳)で、平均寿命との差は0.96歳に過ぎません。つまり40代や50代では、平均余命を参考にしようと平均寿命を参考にしようと、大きな違いは生じません。

 では我々はいったい、どの数字を参考に、人生のゴールを設定すればいいのでしょうか。

永田宏

永田宏

筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。

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