性感染症最前線

梅毒<2>見落とされがち 正確な診断には正直な告白が不可欠

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 近年、患者が急増中の「梅毒」(昨年は6700人以上)。しかし、1960年代後半から患者数が減少を続けていたことから、「昔の病気」と思い込んでいる人が多い。それに若い医師は診療経験がほとんどないので、受診しても見落とされやすい。

 症状は感染から4週間前後で表れるが、体内に抗体ができるのは6週間後ぐらいなので検査をしても陽性にならないことがある。症状は極めて多彩で「偽装の達人」といわれる。どんな症状に注意するべきなのか。性感染症専門施設「プライベートケアクリニック東京」(新宿区)の尾上泰彦院長が言う。

「見逃してはいけない初期症状(早期第1期)は、性器や肛門周辺の病原体が侵入した部分の『しこり(初期硬結)』や『潰瘍(硬性下疳=げかん)』です。加えて、股間のリンパ節が腫れることがあります。しかし、多くが痛みなどの自覚症状がないので気づきにくいのです」

 性感染症を疑うポイントは、「いつ」「どこで」「誰と」「何をしたのか」。受診時に医師にきちんと伝えないと見落とされる可能性がある。尾上院長は過去に、こんなケースがあったという。

 30代男性で受診の3日前に、ピンクサロンでオーラルセックスのサービスを受けた。そして、尿道口から黄色い膿(うみ)が出てきたことから受診。最初は「淋菌性尿道炎」と診断がついた。ところが性器診察時の問診で、さらに約3週間前にソープランドで腟性交とオーラルセックスをしていたことが判明した。

「それで患者さんの尿道口を開いてみたら、尿道粘膜に潰瘍が見つかりました。実は、淋病にかかる前に梅毒に感染していたのです。ピンクサロンで淋病にかかっていなければ、本人は梅毒の感染には気づいていません。診療経験の豊富な専門医でないと、このようなケースでは梅毒は見逃されてしまうでしょう」

 さらに、この患者の喉を調べると淋菌が検出され「淋菌性咽頭炎」にもなっていた。咽頭に自覚症状はなく、発赤やへんとうの腫れなどの所見もなかった。性感染症は重複感染が少なくないので要注意という。また、梅毒は性器以外の皮膚や粘膜の傷口からも感染する。頻度は2~3%以下と低いが、口唇、手指、乳頭などに潰瘍ができる場合がある。

 国内の梅毒の急増を受け、厚労省は今年から医師の届け出内容を変更し、患者の性風俗の利用歴や従事歴を加えるという。

 次回は、梅毒の早期第1期に続く、「早期第2期」「後期梅毒(第3期)」の症状を取り上げる。

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