厚生労働省の平均寿命も平均余命も、我々の老後の長さを知る上で、ほとんど参考になりません。しかしもっと単純で分かりやすい推定方法があります。
2017年(平均年齢81.09歳)に50歳だった男性(Aさん)を例にしましょう。あと約30年(正確には31.09年)生き続けると、Aさんはほぼ平均寿命に達することになります。
ところが平均寿命は延び続けているのです。過去30年間で見ると、1年間に約0.18歳のペースで延びてきました。今後もこのペースで延び続けると仮定すると、Aさんが80歳に到達したとき、平均寿命は約86.5歳になっている計算になります。
さらに頑張って86歳になったときには、平均寿命もさらに延びて約87.6歳になります。計算すると、Aさんが平均寿命に追いつくのは87.9歳に達したときになるのです。
ちなみにAさんは1967年生まれです。したがって逆に、1967年生まれの男性の本当の平均寿命は87.9歳だと言っても間違いではないでしょう。というよりも、厚労省の平均寿命や平均余命よりも、ずっと実用的です。
ただし平均寿命は、同い年の人口が半分に減る年齢ではありません。この時点では、まだ約6割が生存しています。同い年が半分に減る「50%生存年齢」は、平均寿命+約3年になります。さらに「25%生存年齢」は、平均寿命+約9年です。
以上のことを踏まえて、生まれた年ごとの男性の寿命推計値を表にまとめました。
かなり大ざっぱな推計であることは否めません。しかし13年に厚労省が高校生向けに作った資料には「みなさんがお年寄りになるころには100歳まで生きるのが当たり前」「95歳くらいまで生きる前提で老後の生活設計をした方がよい」といったことが書かれています。
当時の高校生は1995年から97年生まれです。そして表を見れば分かる通り、その年生まれの男性の平均寿命は93~94歳。25%生存年齢は100歳を超えています。
表の数字は意外と当たっていそうだ、ということを納得していただけるのではないでしょうか。
永田宏
長浜バイオ大学コンピュータバイオサイエンス学科教授
筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。