患者が語る 糖尿病と一生付き合う法

命に関わる低血糖を簡単に早期発見できる意外な方法が

文意が読み取りにくいと感じたら…(C)日刊ゲンダイ

 その点、小説なりなんなりの原稿を書くという活動なら、十分に能動的である。文章がうまく組み立てられない時点で、自分がおかしくなっていることにいや応なく気づく。

 しかしそれにも、「たまたま調子が出ていないだけなのかな」と疑う余地が残される。

 僕は日頃、原稿を書く時に迷いはほとんど生じない。迷いが生じるとしたら、脳が正常に機能していないのだと見なすべきなのに、現に低血糖になっていると、その認識すら揺らいでしまう。それに、書くべき原稿が常にあるとも限らない。

 いろいろ試してみて、最終的には「語学の勉強」に落ち着いた。僕は言語オタクで、ここ数年は趣味でオランダ語を勉強している。CDを聴いて課題文を書き取り、テキストを見て自ら添削する。それがうまくできない時はおかしい、と自己判断する。これが最も間違いがなかった。

「超速効型」インスリンを使用している現在は、そんな苦労からも解放されている。

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平山瑞穂

平山瑞穂

1968年、東京生まれ。立教大学社会学部卒業。2004年「ラス・マンチャス通信」で日本ファンタジーノベル大賞を受賞。糖尿病体験に基づく小説では「シュガーな俺」(06年)がある。

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