高齢者の多くが血圧の薬を飲んでいますが、介護を必要とするような高齢者は注意が必要です。
健康な高齢者であれば80歳以上であっても、降圧薬を飲むことによって脳卒中や心不全を先送りできることがランダム化比較試験と、そのメタ分析で示されています。しかし、これは介護が必要となる虚弱老人では事情が異なります。
虚弱老人を対象にした研究はここ数年の間に発表されるようになったばかりですが、その結果は、降圧薬の危険や低血圧の危険を示すものが大部分です。
2015年には介護施設に入所中の高齢者で上の血圧が130㎜Hg未満で、かつ降圧薬を2つ以上飲んでいる人が2・13倍死亡リスクが高いことを報告し、さらに2018年に報告された最新の研究でも、18・4%の施設入所者を含み、47・2%が心血管疾患の既往を持ち、63・5%に握力低下が認められる85歳以上の高齢者を対象にして、収縮期血圧が10㎜Hg下がるごとに死亡のリスクが1・29倍になり、認知機能低下も血圧が低いグループで早いという結果が示されています。
デイサービスなどの介護施設で高血圧ばかりが問題にされ、血圧高めの人に「医者にかかって降圧薬をもらわないと入浴できません」というような対応がなされていますが、それで低血圧から転倒を引き起こし、寿命を縮めているかもしれません。
多くの介護施設に伝えたい結果ですが、実際に介護施設に「血圧が高いために入浴を禁止するのはやめてください」と言っても難しいのが現状です。
こうした情報が介護施設にも広く知られるようにするにはどうするか、これは私の今の大きな課題のひとつです。