発達障害とゲーム依存

いつでもどこでもできる手軽さがゲーム依存を生み出す

久里浜医療センター院長の樋口進医師
久里浜医療センター院長の樋口進医師(提供写真)

 クリスマスから年末年始にかけて、家電量販店で賑わうのは、ゲーム売り場。「ニンテンドースイッチ」や「プレイステーション4」といった据え置き機に加え、最近は巨大なゴーグル状の機器を頭部に装着して楽しむVRヘッドセットも登場している。もっとも、いま一番隆盛なのは、いつでもどこでも楽しめるスマホのオンラインゲームだ。電車の中でさまざまなタイトルを一心不乱に操作している人を、見ない日はない。

 現実世界では味わえない冒険を体験させてくれるゲームの世界は、はまりすぎると日常生活に深刻な支障を来すことがある。2017年10月には、埼玉県桶川市のマンションで、オンラインゲームに没頭して、自宅の3人の子供の面倒を見なくなり、当時1歳の三男を衰弱死させた事件も発生している。妻はゲームの課金で生活費が足りなくなり、三男に与えるミルクも薄めたものを飲ませていた。「対人恐怖症で友達がおらず、ゲームのチャットで初めて友達ができて、はまってしまった」と、18年12月5日にさいたま地裁で行われた第3回公判で妻は証言している。14日には、夫妻に共に懲役6年の判決が言い渡された。

 国際的にも問題になっているゲーム依存症を、18年6月18日、世界保健機関(WHO)は、ついに「ゲーム障害」という名前で、正式に疾患として認めた。これにより、この病名は国際疾病分類「ICD―11」の最終版に明記された。19年5月のWHO総会で承認される予定だ。

■オンライン化で依存が生まれた

「ゲーム依存で我々の外来を訪れる患者さんのほとんどが、オンラインゲームに対する依存です。ゲーム依存という病気はゲームがオフラインだった時代はそれほど表面化しておらず、オンラインの時代になって一気に現れてきました。やはり、オンラインでつながって仲間と一緒に敵と戦うとか、第三者とのやりとりが生じることが、依存を生み出す大きな土壌になっています」

 こう解説するのは、久里浜医療センター院長の樋口進医師。「スマホゲーム依存症」(内外出版社)の著書もある樋口氏は、日本におけるネット依存研究の中心人物であり、今回のWHOにおけるゲーム障害の認定にも大きな役割を果たしている。11年に久里浜医療センターで、日本初の「ネット依存外来」を開設し、一貫して治療に当たってきた樋口氏はこう続ける。

「特にスマホで、いつでも、どこでもプレーできるようになって、ゲーム依存の問題はさらに深刻化しました。私たちの外来も開設当初はパソコンでMMORPG(大規模多人数同時参加型オンラインRPG)をプレーしている患者が多かったのですが、いまはスマホのゲームにはまっている人が圧倒的に多いのです」

(フリージャーナリスト・里中高志)

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