治らないめまいに“持続性知覚性姿勢誘発めまい”の可能性

運動と呼吸法に気をつけ、自律神経の偏りをリセット
運動と呼吸法に気をつけ、自律神経の偏りをリセット(C)日刊ゲンダイ

 めまいで悩んでいる。病院に行っても診断名がつかない――。もしそうなら、2017年にめまいの国際学会が新たに診断基準を定めた「持続性知覚性姿勢誘発めまい(PPPD=Persistent Postural Perceptual Dizziness)」かもしれない。

 日本でも近々、公に学会で発表される見通しだ。

 PPPDについては、めまいの国際学会「Barany Society」の診断基準策定に唯一の日本人として参加した新潟大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科学分野教授の堀井新医師(耳鼻咽喉科医)を中心に、国内でもそれに関係する研究会が立ち上げられている。JCHO東京新宿メディカルセンター・耳鼻咽喉科診療部長の石井正則医師も、そのメンバーのひとりだ。

「研究会が発足したのは16年。ほとんどの医師がPPPDについて詳細には知らないのではないでしょうか」(石井医師=以下同)

 現在、日本めまい平衡医学会が作成するめまいには、16の疾患がある。メニエール病、良性発作性頭位めまい症、前庭神経炎、心因性めまいなどだ。しかし、これらのどれにも該当しないめまいもあり、その場合は「めまい症=診断がつかない原因不明のめまい」とされ、治療法もなかった。その中に、PPPDが含まれているのではないかと指摘する声もある。

 PPPDは浮動感、不安定感、非回転性のめまいのうち1つ以上が3カ月以上ほぼ毎日続く。

「椅子から立ち上がった瞬間、ふらついたり、ラッシュの人混みや陳列物を見ると揺れる感じが強くなります。ベッドから起き上がる、目の前の風景が変わるなどで症状が悪化します」

■抗うつ薬の一種が効くという声も

 PPPDは心因性めまいなど、ほかのめまいの疾患と合併していたり、良性発作性頭位めまい症と混同して診断されているケースもある。治療法は確立されていないが、うつ病治療などに主に使われるSSRIが効くこともあるといわれている。

 ただし、石井医師は、薬だけの使用に懐疑的だ。かつて、めまい治療に薬を積極的に使っていた時期もあったが、一時的にめまいに効いても、今度はこのような薬をやめることが非常に難しいという新たな問題点が生じるからだ。

「長いめまい治療の経験から、疾患が何であれ、めまいでは薬を使わない治療法が最適と考えるようになりました。PPPDについては、薬の使用に関しては意見が分かれています。そもそも私はめまいと自律神経の関係に着目し、自律神経の偏りをリセットすることに重きを置いた治療を行っています。ほかの医療機関で良くならなかっためまいが改善したケースは多くあります」

 石井医師がめまい患者に勧めているのは、運動と呼吸法だ。いずれも、バランスが崩れた自律神経を正常な方向に持っていくのに役立つ。

「運動では有酸素運動がいい。特に3~5分早歩きし、3~5分ゆっくり歩くインターバル歩行が自律神経を整えることは、国内外の研究で明らかになっています。さらに、唯一自律神経に働きかけることができるのが呼吸です。めまいなどに悩んでいる人には、浅い胸式呼吸がよく見られます。これは、交感神経を緊張させ、自律神経のバランスを崩します。横隔膜を動かし、ゆったりとお腹から呼吸する腹式呼吸を心掛けてください」

 めまいが改善しない人は、現段階では、運動と呼吸法から始めてみようではないか。

■PPPDの国際的な診断基準

 一部は次の通り。「浮動感、不安定感、非回転性めまいのうち1つ以上が、3カ月以上にわたってほとんど毎日存在する」「3つの因子(立位姿勢、特定の方向や順位に限らない能動的あるいは受動的な動き、動いているもの、あるいは複雑な視覚パターンを見たとき)で増悪する」「ほかの疾患や障害ではうまく説明できない」

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