後悔しない認知症

前頭葉の老化による高齢者の頑迷さにどう立ち向かうか

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

「どうすればいいか?」。答えは「ルーティン以外のことをやらせる」である。前頭葉は、意欲や感情のコントロールのほか、想定外のこと、新しいことへの対応をつかさどるのだが、「ルーティン以外」への対応で使われる部位でもある。だから、混乱をきたすレベルの重めの認知症でない場合、親が高齢であっても「初対面の人に会う」「行ったことのないエリアを旅する」「初めての飲食店に入る」「新しいファッションを試みる」「新しいジャンルの音楽を聴く」「読んだことのない著者の本を読む」など、その人にとって新鮮な体験を数多くさせることだ。それが親の前頭葉を使わせることになるのである。

 言葉を変えれば、これまでの自分の世界観、価値観に「一石を投じる体験」をさせるといってもいい。とくに同じ話、耳当たりのいい話しかしない人ではなく、考え方が違ったり、自分とはまったく異なる生き方をしてきた人と会話したり、読みなれていないジャンルの本、主義主張が正反対の人の本を読む機会を増やしてあげることも有効だ。

 そうしたチャレンジは「親の脳を悩ませる」ことだが、それが固くなった脳を「ほぐす」ことになり、結果として「脳の老化」を遅らせることにつながる。「人のいうことを聞く耳」も長く持つということだ。

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和田秀樹

和田秀樹

1960年大阪生まれ。精神科医。国際医療福祉大学心理学科教授。医師、評論家としてのテレビ出演、著作も多い。最新刊「先生! 親がボケたみたいなんですけど…… 」(祥伝社)が大きな話題となっている。

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