医者も知らない医学の新常識

アルコール基準値を厳格化すると飲酒運転は減るのか?

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 お酒を少しでも飲めば車を運転してはいけません。誰でも分かっている常識ですが、実際には今も飲酒運転と、それに伴う事故は後を絶ちません。

 自分が酔っているかどうかの判断は、とても主観的なものですから、「少し飲んだけれど頭ははっきりしているから大丈夫」と、運転してしまうことが多いのが実際なのかも知れません。

 飲酒運転(正確にはそのうちの酒気帯び運転)であるかどうかは、呼気や血液のアルコール濃度を測定して判断されます。

 しかし、その基準は非常に厳しいことが知られています。欧米では血液1ミリリットル中のアルコールが、0・5~0・8ミリグラム以上というのが基準となっていることが多い。

 ところが、これが日本では0・3ミリグラム以上となっています。お酒を少し飲んで一眠りしても、この基準は上回ることがあっておかしくはないのです。それでは、アルコールの基準値をこのように厳しくすると、飲酒運転をより減らす効果はあるのでしょうか? 

 昨年の「ランセット」という医学誌に、それについての論文が掲載されています。スコットランドでは2014年に、飲酒運転の基準値がそれまでより厳格化されたのですが、その前後で比較しても、交通事故は減らなかったのです。

 飲酒運転は決して許してはならない犯罪ですが、基準を厳格化するだけでは、飲酒運転は減らないというのも、科学的事実ではあるようです。

石原藤樹

石原藤樹

信州大学医学部医学会大学院卒。同大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科研修を経て、1998年より「六号通り診療所」所長を務めた。日本プライマリ・ケア学会会員。日本医師会認定産業医・同認定スポーツ医。糖尿病協会療養指導医。

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