発達障害とゲーム依存

専門医が指摘 ゲーム依存症患者の約2割はADHDを合併

久里浜医療センター院長の樋口進医師
久里浜医療センター院長の樋口進医師(提供写真)

 2018年6月、世界保健機関(WHO)によって、正式に疾患と認められたゲーム障害。それは、以下のように定義されている。

「ゲームの優先順位が高まり、生活上の問題が生じても、その他の興味や日常の活動よりもゲームを優先して継続またはエスカレートさせるほど、ゲームに対して自らのコントロールを失っており、個人、家族、社会、学業、仕事などにおける役割に重大な影響を及ぼす状態が、12カ月以上持続するか、上記症状が重症である」

 いま、このゲーム依存によって、「学校や仕事に行かなくなる」「食事や睡眠も満足に取らなくなる」といった生活に深刻な支障を来す人が増加している。顕著なのが若年層だ。厚生労働省の研究班の調査では、ネット依存が疑われる中高生は93万人。その人数は5年間で約40万人増えている。この中にはSNSや動画に依存している人も多いが、病院を受診するネット依存の大半は、オンラインゲームの依存であると、久里浜医療センターの樋口進医師は言う。

■1日に10万円以上つぎ込む課金の魔力

「特にいま問題になっているのが、スマホゲームで広く見られる課金です。ゲームを進める過程で、強くなるためのアイテムや新しいキャラクターを、ランダムで手に入れるガチャという要素があるのですが、これが、たとえば1回500円で、40回連続でやると2万円。夢中になると、1日10万円、15万円はすぐに使ってしまえるシステムになっているのです」

 現在、スマホゲームのほとんどは、アプリをダウンロードすることで無料で始められる。だが、スマホゲームの開発には膨大な製作費がかかる。その製作費を回収するためにも、スマホゲームには、コアなファンが多額の課金をする仕組みが欠かせないのだ。

 生活に深刻な影響を及ぼすゲーム障害。その中には、一般の人に占める発達障害の人の割合よりも、はるかに高率に発達障害の人が含まれているという、興味深いデータがある。樋口医師は、こう説明する。

「発達障害は、主に自閉症スペクトラム(ASD)、注意欠如・多動性障害(ADHD)、学習障害(LD)の3つに大別されますが、特にADHDとゲーム障害には親和性があり、久里浜医療センターのネット依存外来に来ている患者さんの中にも、ADHDと診断される人は20%近くを占めています。これは、ADHDとされる人が、どんなに多く見積もっても全人口の5%以下であることを考えると、極めて高い数字だと言っていいでしょう」

 ADHDは、落ち着きがない多動性、思ったことをすぐ口に出したり行動してしまう衝動性、そして、忘れ物や仕事のミスが多い不注意などを特徴とする。

 ゲーム障害の人のそれが多く見られるのは、どのような理由からなのだろうか。

(フリージャーナリスト・里中高志)

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