患者が語る 糖尿病と一生付き合う法

何かをうまくできない夢を見て目覚めた時はほぼ低血糖

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ


 自分が死に瀕していると本能的に察知する結果、「渡ってはいけない三途(さんず)の川」がイメージ化されているのかもしれない。

 ただしこれらは、覚醒している間に意識障害を起こした時の話だ。就寝中の低血糖だと別の表れ方になることが多い。同じ情景が夢に出てくるのなら分かりやすいのだが、そうとも限らない。

 よくあるのは、原稿を直している夢だ。あるくだりを、何度も何度も書き改めている。もっとうまい表現方法があるはずだと探る一方で、「いや待てよ、ここであのことにも触れておいたほうがいいのでは?」と気が移ろい、文章がどうしてもまとまらない。

 あるいは、数学の問題を解こうとしても解けないとか、洗面台の排水口が洗っても洗ってもきれいにならない、といった夢になる場合もある。「何かがうまくいかずに焦っている」という強迫的な内容である点では共通している。

 そういう夢を見て目覚めた時、血糖値を測ると、たいていは低い。「早く手を打て」と本能が警告しているのだろう。

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平山瑞穂

平山瑞穂

1968年、東京生まれ。立教大学社会学部卒業。2004年「ラス・マンチャス通信」で日本ファンタジーノベル大賞を受賞。糖尿病体験に基づく小説では「シュガーな俺」(06年)がある。

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