受験生なら母娘で読みたい 生理日をコントロールする方法

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 センター試験も終わり、大学入試もいよいよ本番。受験生のなかには今後数日から数週間の受験ツアーを強いられる人もいるだろう。都立高校の学力入学試験は2月下旬、大阪府立高校は3月中旬に行われる。私立高校はそれより早く、看護師・薬剤師の国家試験も2月下旬だ。親としては「日頃の勉強の成果を受験日に発揮して欲しい」と願うばかりだが、女子生徒・学生のなかには不運にも生理日と重なり実力を発揮できない場合もある。ピルで生理日をずらす方法があるが、問題はないのか? 日本産科婦人科学会専門医で「ウィメンズクリニック・かみむら」(岡山市)の上村茂仁院長に聞いた。

「男性には想像できませんが、生理痛は人によってはかなり深刻です。鎮痛剤で症状を和らげられればまだマシで、起き上がれないほどの生理痛もあります。生理日と試合や受験日が重なる場合は生理日をコントロールする方法があります。運動選手や一部受験生はそれを実践していますが、多くの女子生徒や学生は知らないかもしれません」

 実際、生理不順で上村院長のもとを訪れた20代後半の女性にその話をすると、「生理痛がひどく受験に失敗。人生が変わった。そんな方法があれば知りたかった」と嘆く女性は少なくないという。

 その方法は簡単だ。生理日を遅らせたい場合は生理の開始予定日の5日前くらいから毎日、中用量ピルまたは黄体ホルモン製剤を飲み、生理がきても大丈夫なタイミングで飲むのをやめるだけ。生理日を早めたい場合は前回の生理5日目あたりから10日間以上飲み続ける。すると飲み終わって2~3日後から生理が始まるという。

「普通は受験3カ月前くらいから低用量ピルを使って、徐々に生理日を移動させますが、中用量ピルなどを使えば今からでも間に合います。むろん、誰でも100%生理日をずらせるわけではありません。遅らせるより早める方が難しいのですが、たいていは思い通りになります」

 生理痛の治療には一般的に低用量ピルを使うことが多いが、頭痛や吐き気、血栓ができやすいという副作用がある。

「だからこそ産婦人科を受診し、その人に合ったピルを選ばなければなりません。よく副作用ばかりを聞きかじって、ピルに偏見を持つ人がいますが、それはピルや生理、生理痛をよく知らないからです。産婦人科を受診すればそうした偏見も解消されるはずです」

 そもそも生理(=月経)とは約1カ月の周期で子宮内膜が出血を伴ってはがれ落ち、体外へ排出されること。主に卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン(プロゲステロン)の2つの女性ホルモンが関係する。前者は情緒安定に働き、後者は不安定にさせる。生理周期は25~38日が普通で、生理が始まって14日目に排卵が起こる。

 生理痛の大きな原因は「プロスタグランジン」と呼ばれるホルモンに似た物質だ。生理中に肥厚する子宮内膜のなかにあって、子宮を収縮させたり、子宮への血流を減少させたり、子宮神経の痛みを敏感にさせたりする。生理前から急激に分泌量が増えるが、その量が多すぎると子宮が収縮し過ぎて痛んだり、血管の収縮のし過ぎで腰痛や冷え、だるさがきつくなる。胃腸への影響から吐き気や下痢の原因にもなる。

■便利に方法を毛嫌いするのはもったいない

 体温を上げる働きなどがある黄体ホルモンも生理痛の原因だ。

 このホルモンは、排卵後に分泌される。その影響で女性は体をコントロールする自律神経のバランスを崩し、頭痛やイライラなどの不調を起こす。

「ピルはこの2種類の女性ホルモンが含まれています。そのため、内服するとこれらの女性ホルモンが体内に分泌された状態になり、排卵と子宮内膜の肥厚を抑制するだけでなくプロスタグランジンの過剰分泌を抑えます。また、ピルの内服で黄体ホルモンの種類が変更されることで、月経前のイライラや頭痛、吐き気などが鎮まるのです」

 とはいえ、「子供がピルを使うなんて」と眉をひそめる人もいるかもしれない。

 しかし、日本では避妊用ピルと区別して低用量ピルを「低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬」(LEP)と呼び月経困難症の治療薬として使われている。産婦人科のガイドラインなどでも紹介されている。

「月経困難症とは日常生活が困難になる生理痛をいいます。機能性と器質性の2通りあり、治療法が違います。10代の月経困難症の多くは機能性で、治療は非ステロイド性抗炎症剤(NSAIDs)、LEP、当帰芍薬散や加味逍遥散などの漢方薬、子宮発育不全の場合は鎮痙薬などで行います」

 ただし、10代でも子宮内膜症や子宮筋腫などが原因の器質性月経困難症になる人もいる。生理痛治療には婦人科の診察が必要だ。

 知識が乏しいが故に偏見を持ち便利な方法をハナから毛嫌いするのはもったいない。まず産婦人科で相談してみることだ。

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