Dr.中川のみんなで越えるがんの壁

私自身がんになって<4>膀胱がん再発を抑えるBCGはやらない

「pTa」だったが…(提供写真)

 再発が起こると、今回と同じ内視鏡切除を行うことになります。

 再発するたびにこの治療を10回以上繰り返している方もいたりします。他のがんなら、完全切除すれば治療が完了することがありますが、筋層非浸潤性膀胱がんは、再発しては手術、再発しては手術を繰り返すのです。米国では、「最も医療費がかかるがん」といわれるほどです。

 再発を予防するために有効なのは、BCG(ウシ型弱毒結核菌)を膀胱に注入する治療法があります。BCG治療による5年再発率は約4割、未実施では6~7割。

■初回治療から10年後に進展する人も

 しかし、BCG注入療法は抗がん剤注入療法と異なり、ごく軽微なものまで含むと、ほぼ全例の患者さんに何らかの副作用が表れます。排尿時の痛みや頻尿が最も多く80%、次いで肉眼的血尿が72%、排尿困難が33%などのほか、尿道痛や残尿感、陰茎浮腫などが起こることもあります。さらに60%に発熱が見られ、発熱に伴う関節痛、白血球の増多なども珍しくありません。

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中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

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