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腹部超音波検査は尾道方式なら難治すい臓がんも早期発見

5年生存率は全国平均の3倍に
5年生存率は全国平均の3倍に(C)日刊ゲンダイ

「脂肪肝を指摘されちゃって」

 酒場で健康のことが話題になると、肝臓がテーマになることがよくあります。その一つの脂肪肝を調べる検査が、腹部超音波検査。プローブと呼ばれる器具を腹部などに当てて超音波を発生させ、反射した超音波を受信して画像データとして処理します。魚群探知機と同じ原理です。

 肝臓のほか、膵臓や胆のう、腎臓、脾臓、膀胱などの状態を調べることができます。それらの臓器の結石のチェックにも効果的です。中高年ならおなじみでしょう。

 その精度は飛躍的に向上しています。1995年の報告によると、腹部超音波検査を受けた人のうち無症状の肝臓がんと胆のうがんを見逃した割合は、それぞれ16%、38%と高く、「画像検査の限界」が指摘されていました。

 それが、2010年の日本超音波医学会の報告では、腹部超音波検査を受けた2万8413人のうち誤診例は0・2%に激減しています。学会報告はがん以外の病気も含めたもので、対象に違いがありますから、そのまま比較することはできませんが、精度の向上ぶりはある程度うかがい知ることができるでしょう。

 それでも、膵臓は胃の後ろにあって十二指腸や肝臓、大腸などに囲まれているため、超音波でもチェックが難しい。膵臓がんは早期発見が困難で、難治がんとして知られています。プロ野球の星野仙一さんや元横綱の千代の富士関らが、このがんで亡くなったことでもご存じでしょう。

 では、まったく無理かというとそうではありません。広島・尾道では、JA尾道総合病院を中心に膵臓がんを早期発見する取り組みが進んでいるのです。

 膵臓がんは「糖尿病」「肥満」「喫煙」「膵臓がんの家族歴」などがリスクで、クリニックの受診者がこれらに該当すると、腹部超音波検査を実施。異常があるとすぐに総合病院に紹介します。この仕組みを徹底した結果、5年生存率は全国平均の3倍近い20%に上昇。超早期のステージ0で発見される人も珍しくないようです。

 では、尾道在住でない人はどうすればいいかというと、特に糖尿病の人は毎年1回、腹部超音波検査を受けることをお勧めします。より精密な超音波内視鏡ならなおよしです。

梅田悦生・赤坂山王クリニック院長

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