市販薬との正しい付き合い方

種類・メーカー・医療用…漢方薬の“複雑な違い”を知る

同じ名前の漢方でも含まれている成分の量には差が
同じ名前の漢方でも含まれている成分の量には差が(C)日刊ゲンダイ

 情報通信技術(ICT)が著しく進む昨今、お薬手帳も電子化が進みつつあります。電子媒体に慣れた方であれば、OTC医薬品(市販薬)を含めた薬の管理がしやすい時代になってくるでしょう。また、ICTに人工知能(AI)が加わることによって、より適切な薬選びが簡単にできるようになる可能性も大いにあります。同時に薬の「自己管理」の重みが増してくるかもしれません。

 薬において「最先端」とは対極にあるのが、「伝統」的な薬である漢方といえます。漢方薬は生薬(天然由来の抽出物)を組み合わせた薬で、国内に流通しているもので100種類以上、中国では数十万種類と非常に多くの種類があります。この中から、症状に合わせたものを選ぶ必要があるので、漢方の服用を始める際は、医師、中医師、薬剤師に一度は相談する必要があります。

 漢方が複雑なのは、種類だけでなく製造・販売メーカーもたくさんあり、さらには医療用とOTCもあるところです。これらの違いによって、同じ名前の漢方であっても含まれている成分の量に差があるのはご存じでしょうか? つまり、「A社は効くが、B社は効かない」「医療用は効くが、OTCは効かない」、またはその逆があり得るということです。

 たとえば、漢方の代表例でもある葛根湯に含まれる「カッコン」はメーカーによって2倍以上差があるものもあります。薬選びで注意しておきたいポイントです。

 実は漢方の世界にもAIの波は押し寄せてきていて、適切な漢方処方の見極めにAIを導入しようと研究が進んでいるといいます。「温故知新」の「知新」、いわゆるイノベーションは医療業界においてどんどん加速していきそうです。

神崎浩孝

神崎浩孝

1980年、岡山県生まれ。岡山県立岡山一宮高校、岡山大学薬学部、岡山大学大学院医歯薬学総合研究科卒。米ロサンゼルスの「Cedars-Sinai Medical Center」勤務を経て、2013年に岡山大学病院薬剤部に着任。患者の気持ちに寄り添う医療、根拠に基づく医療の推進に臨床と研究の両面からアプローチしている。

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