健康寿命はほとんど当てになりません。しかし何歳ぐらいで介護が必要になるのか、大いに気になるところです。
厚生労働省の「介護保険事業状況報告」によれば、2017年1月時点での要支援・要介護者の人数は、約631万人(男性約195万人、女性約436万人)でした。
ちなみに要支援とは「日常生活はほぼ自力でできるが時々介助(手助け)が必要」でかつ「介護サービスを受けることで、生活機能が維持・改善できるかもしれない」状態とされています。要支援1と2に分かれており、2のほうが重症です。
要介護は1から5まで分かれています。要介護1はもっとも軽く、日常生活全般を何とかこなせるが介助や支援が必要な状態、あるいは軽い認知症が入っている状態です。要介護5になると、ほとんど寝たきりで、意思の疎通も困難になります。
定年後も軽い仕事を続けたいということであれば、要介護は言うに及ばず、要支援も避けたいところです。もっとも軽い要支援1でも、足腰がだいぶ弱っているため、立ち仕事や、移動が多い仕事は難しくなります。手先の器用さも失われます。
認知症というわけではありませんが、人によっては認知能力が衰え始め、注意力も低下します。新しいことがほぼ覚えられなくなり、昨日言われたことを思い出せなかったり、同じ話を何度も繰り返したりと、仕事に必要なコミュニケーション能力がだいぶ落ちてしまいます。
そこで男性の年齢別に要支援・要介護者(合計)の割合を計算してみると、次のような結果になりました。
65~69歳 3.3%
70~74歳 5.8%
75~79歳 10.9%
80~84歳 21.5%
85~89歳 37.4%
90歳以上 57.6%
60代後半で要支援以上になる人は少ないですが、70代後半では10人に1人、80代前半では10人に2人といった具合に、年齢とともに増えていきます。
これらの数字から、働くとしてもせいぜい75歳か80歳ぐらいまで、と思えてしまいます。しかし寿命はさらに15年、20年も続くのです。
永田宏
長浜バイオ大学コンピュータバイオサイエンス学科教授
筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。