性感染症最前線

性器クラミジア<1>感染率は性交1回で50% HIVの50倍以上

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

「日本感染症学会診断・治療ガイドライン2016」には、17疾患の性感染症が記載されている。その中でも最も患者数が多いのが「クラミジア」だ。国が指定する約1000カ所の医療機関の定点報告を見ると、2002年の約4万3000人をピークに減少しているものの、16年には約2万4000人が報告されている。

 病原体は、クラミジア・トラコマチスという細菌の一種で、粘膜との接触で感染する。他の性感染症と比べて圧倒的に多いのはなぜなのか。性感染症専門施設「プライベートケアクリニック東京」(新宿区)の尾上泰彦院長が言う。

「HIV(エイズウイルス)が1回の性行為で感染する確率は1%未満ですが、クラミジアは約50%と感染力が強い。しかも、男性の50%、女性の70~80%は症状が出ません。ですから女性の方が男性より2倍以上多い。それに症状が出たとしても、比較的軽いので気づかないまま感染を拡大されやすいのです」

 感染経路は、腟性交による尿道や子宮頚管への感染。オーラルセックスによる咽頭感染。肛門性交による直腸感染。感染者の体液が目に入ることで、クラミジア性結膜炎という感染経路もある。

 目から感染すると病原体が目と鼻をつなぐ鼻涙管を通って鼻腔へ移行、そして咽頭へ感染するという場合もある。咽頭に感染しても、発赤や腫れなどの症状はほとんど表れない。そのためパートナー間でピンポン感染が起こりやすいのだ。

 男性の典型的な症状は「クラミジア性尿道炎」という。

■男性不妊の原因に

「感染の機会から1~3週間後に、尿道口から水っぽい白い分泌物が出ます。また、尿道のかゆみ、違和感、不快感などもありますが、いずれも軽い。しかし、放置していると精巣上体炎を発症する恐れがあり、男性不妊の原因になります。副睾丸が腫れて痛いのが特徴です。精巣上体炎の多くは、クラミジアが原因とされています」

 妻が子宮がん検診などに行き、クラミジアが見つかったが、夫は検査しても陰性ということも珍しくないという。その場合には、検査法が正しく行われていない可能性がある。男性のクラミジアの尿検査は、最後に排尿してから2時間以上経ってから採尿する。しかも排尿初期の約20㏄で検査する。これが守られていないと偽陰性になりやすいという。検査を受けるなら性感染症の専門医を受診した方がいい。

 次回は、女性のクラミジア性子宮頚管炎を取り上げる。

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