天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

妊婦が風疹にかかると胎児に心臓疾患が起こりやすくなる

天皇の執刀医 天野篤教授(C)日刊ゲンダイ

 風疹と心臓疾患の関わりにおいて、最も注意しなければならないのが妊娠初期の女性の感染です。ワクチン接種歴がなく免疫がない妊娠初期の母親が風疹にかかると、風疹ウイルスが胎児に感染して、出生児に先天性風疹症候群(CRS)と呼ばれる先天性の障害を引き起こすケースがあるのです。

 とりわけ、妊娠3カ月以内の胎生期、胎児の器官が形成される時期に感染すると器官の形成不全を起こしやすくなります。中でも、心臓や循環器に大きな影響を及ぼし、動脈管開存、肺動脈狭窄、心室中隔欠損症、心房中隔欠損症といった心臓疾患を合併しやすくなるのです。こうした心臓疾患は、軽度であれば自然治癒する場合もありますが、手術が可能になった時点で治療を行うケースも少なくありません。

 先天性風疹症候群の怖いところは、母親の風疹感染が見過ごされやすい点にあります。風疹は「明らかに風疹です」といったきつい症状が表れないことが多く、風邪の延長といった感じの患者さんもいます。発熱しても38度5分くらいで、発疹の程度も麻疹(はしか)のようにひどくないため、1日、2日休んで安静にしていれば乗り切れてしまう場合があります。そういう患者さんが妊娠してると危ないので、とりわけ注意が必要です。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

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