病み患いのモトを断つ

重要なのは発症2日目 インフル重症化「命を左右する」対応

無理して出社しない
無理して出社しない(C)日刊ゲンダイ

 1週間も休めないよ……。突然の高熱で何となくインフルエンザ感染を疑いながらも、無理して仕事に出掛ける人は少なからずいるだろう。

 先月22日に東京メトロ中目黒駅のホームから転落して、電車にはねられて死亡した会社員の女性は3日前から「インフルエンザかもしれない」と家族に語っていた。事故の前日は休んだものの、当日は出社途中で、搬送先の病院でインフル感染が確認されている。

 その女性を巡っては、うつろな目つきでふらついていたといった目撃情報もあり、異常行動を起こすインフルエンザ脳症説も浮上する。東京医大名誉教授の加藤治文氏はこう言う。

「脳症は、インフルエンザであってもなくても、高熱なら起こり得ます。ですから、異常行動をインフルエンザと結びつけて考えるのは必ずしもよくない。単なる風邪による高熱でも、脳症になりますから。とにかく高熱は、なるべく早く解熱することです」

 いたたまれない事故が起こった一方で、28日のブログで「花粉症の症状かなぁ~と自己判断で気楽に考えていました。しかしやっぱりインフルエンザ」とつづったのは、カウンターテナー歌手の米良美一さんだ。体調が悪く受診した病院で検温すると、35.9度。平熱同然だから、インフルを疑うはずもないが、検査の結果、A型のインフルと判明したらしい。

 米良さんのケースは、ワクチンのおかげだが、ワクチンは毎年、効く効かないが論争になる。改めておさらいしておこう。加藤氏に聞いた。

「インフルエンザには、多くのウイルスがあり、ワクチンは次のシーズンに流行しそうな型を予測して組み合わせて作ります。今年は、バッチリでしたから、予防効果が高い。たとえ発症しても、軽くて済みます」

■解熱し再び上昇

 完全に防げないのは、人によってウイルスをブロックする抗体の活性度が違うためだ。一般に、65歳以上の健康な人は、45%の発病を阻止し、約80%の死亡を抑える効果があるという。

 しかし、ワクチンを接種していない人がインフルに感染しても、米良さんのように高熱にならないことがある。風邪かインフルか迷うだろう。

「糖尿病やがん、呼吸器系などの持病がある人は、たとえ熱が低くても、免疫力が低く、肺炎を併発しやすい。受診が無難です」

 インフルエンザから生じる肺炎は、インフルそのものが悪さをしているケースもあれば、別の細菌やウイルスが混合感染しているケースもあるという。

「混合感染で一番怖いのは、肺炎球菌です。高齢者は、5年に1回、肺炎球菌ワクチンを接種しておくといいでしょう」

 それでも、ちょっとした対応のまずさが、命を左右することがある。重要なのは、インフル発症2日目だという。

「一般に治療でインフルエンザの熱が下がって再び上昇するのは、インフルエンザから2次的に肺炎を起こしたときの典型的な症状。それが発症2日目です。すぐに受診してください」

 インフルによる肺炎で命を落とすのは、乳幼児と高齢者で6割。子供や親の解熱が進むと、ホッとするだろうが、気が緩んだ瞬間、上がり始めたら、「少し様子を見てみよう」ではダメなのだ。インフル社員に出社を強要するブラック企業は論外だが、重症化を防ぐ知恵はしっかりと頭に入れておこう。

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