10~14歳が発症する1型糖尿病に新薬が 気になる注意点は?

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 糖尿病には1型と2型があるが、昨年末、1型糖尿病の新しい薬が承認された。川崎医科大学特任教授の加来浩平医師に話を聞いた。

 生活習慣などが原因でインスリンが「少なく」または「効き目が悪く」なるのが2型糖尿病。一方、膵臓のβ細胞の破壊でインスリンの分泌が「ない」のが1型糖尿病で、10~14歳の思春期が発症年齢のピークだ。

「1型はインスリンの自己注射が必須。2型に使える経口血糖降下薬は7種類ありますが、これまで1型では保険適用となるのは1種類しかありませんでした」(加来医師=以下同) 

 ところが今回、経口血糖降下薬であるSGLT2阻害薬が1型に承認された。2014年に2型に承認されている薬で、ブドウ糖の腎臓での再吸収を阻害して尿中に排泄する働きがある。この登場によって、1型患者の血糖コントロール改善が期待されている。

 というのも、1型糖尿病患者は血糖コントロールが十分にできない場合が珍しくないからだ。

「糖尿病患者のHbA1cを調べた研究では、インスリンの進歩で血糖管理が良くなっているものの、1型では7.8%前後が頭打ち。2型では、半数以上が合併症予防の目標値、7%をキープできています」

 そこで行われるのが、1日4~5回インスリンを打ち、健康な人と同じような血糖値の変動に近づける強化療法だ。従来の方法と強化療法を比較した研究では、長期的に見れば、強化療法の方が心筋梗塞などの心血管イベント発症率が低く、死亡率も低い。ところが、ここにも問題がある。

「強化療法などでHbA1c値が良好なほど合併症の進行は抑えられます。しかし、今度は命に関わる重症低血糖の頻度が増える。重症低血糖が怖いから、これ以上血糖値を下げられない。しかし、HbA1c7.8%は高い。これをなんとかできないか、という思いがありました」

 そこで、SGLT2阻害薬の登場だ。この薬は血糖低下のほか、体重減少、血圧低下、HDL(善玉)コレステロール増加、中性脂肪低下など2型の病態を統合的に改善することが分かっている。1型にも同様の効果があるのではないかと考えられ、1型対象の臨床試験が行われた。それによると、SGLT2阻害薬はプラセボ(偽薬)に比べて、HbA1cと空腹時血糖値をより下げ、併用総インスリンの1日の投与単位数も減らせた。

■体重も減少

 また、1型はインスリン治療を受けていても体重が徐々に増加することが指摘されていたが、SGLT2阻害薬を投与すると、プラセボ群より有意な体重の減少が見られた。

 さらに、長期投与試験では、1年間にわたり、HbA1cの改善効果を維持できることが確認された。

「ただし、1型でSGLT2阻害薬を使う場合、特に注意すべき点があります。この薬はインスリンに併用して使うのですが、インスリンを減量しないと低血糖のリスクが高まる。ところが、インスリンを減量しすぎると極度のインスリン不足で血液が酸性になり、体の異常が起こるケトアシドーシスのリスクが高まるのです」

 だから、インスリンの減量を主治医の指示のもと慎重に行いながら、SGLT2阻害薬を使用することになる。血糖値によっては、ケトアシドーシス対策のために、インスリンを減量せずに様子を見ることもある。

「SGLT2阻害薬によって、インスリンの量を減らせる可能性はあります。しかし、インスリンをやめるための薬ではない。インスリンは必須であることを忘れてはいけません」

 1型であれば、主治医に相談を。

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