後悔しない認知症

怒りっぽくなるのは「性格の先鋭化」という老化現象です

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 高齢の親を見て「最近、怒りっぽくなったな」と感じることはないだろうか。地下鉄の駅、スーパーあるいは街頭で激高する高齢者をしばしば見かける。観察してみると、怒りの原因はささいなことがほとんどだ。そうした高齢者はある日突然、怒りっぽくなったわけではない。もともと「怒りっぽい」性格を持っていたのである。若いころは機能していた感情のコントロール力が、前頭葉の萎縮によって弱まったと考えられる。認知症であるかどうかを問わず、老化の症状のひとつは、もともとの性格が「際立つ」ことだ。老年精神医学では性格の「先鋭化」と呼ばれる。

「私のお金がなくなった」などと事実ではないことを口にし始めるのは、もともと疑い深い性格の高齢者が多い。ささいなことを過剰に悲しむのはもともと悲観傾向が強い人、心配性というか、「杞憂」の人だ。

 周りの人がなだめて説明し、親自身が「勘違いだった」と修正することもある。だが、症状が進んでいくと、ある種の妄想傾向が生じることもある。たとえば「お金がなくなった」と感じたとしても「何か買ったのかもしれない」「しまう場所を忘れたかもしれない」「そもそもなかったかもしれない」と想定できればいいのだが、それができなくなる。すぐに「子どもが盗んだ」と決めつけてしまう。さまざまな可能性を考える想定能力は、認知症症状が進むほど低下する。やがて想定などせずに、すぐに感情に訴えた言動をするようになってしまう。

1 / 3 ページ

和田秀樹

1960年大阪生まれ。精神科医。国際医療福祉大学心理学科教授。医師、評論家としてのテレビ出演、著作も多い。最新刊「先生! 親がボケたみたいなんですけど…… 」(祥伝社)が大きな話題となっている。

関連記事