後悔しない認知症

怒りっぽくなるのは「性格の先鋭化」という老化現象です

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

■感情的な対応は火に油を注ぐだけ

「おまえが取ったんだろう」「意地悪ばかりしている」などの妄想、性格の先鋭化による言動は子どもにとってつらいことだ。しかし、ここで子ども自身が「泥棒呼ばわりはやめろ」「ボケてんだから」などと感情的な対応をすれば火に油を注ぐだけだ。

 認知症の進行、発症によって親の言動に事実誤認や性格の先鋭化が見られる場合、子どもは冷静、丁寧な説明を心がけ、少しでも親が受け入れる道を探るべきだ。何度も述べるが、重度の場合はともかく、認知症だからといって、物事の理解力がすべて失われるわけではない。根気強くコミュニケーションを取り、残存している理解力を劣化させないことが大切だ。

 では、どう対処すればいいのか。事実誤認を防ぐためには、子どもがメモを作成して親に渡して、親が定期的に読み返すようにするという方法もある。たとえば「年金はタンスの2段目」「預金通帳は手提げ金庫」「キャッシュカードは机の2番目の引き出し」などと記したノートやメモを渡しておく。また買い物をしたらその明細を家計簿につけておく。

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和田秀樹

和田秀樹

1960年大阪生まれ。精神科医。国際医療福祉大学心理学科教授。医師、評論家としてのテレビ出演、著作も多い。最新刊「先生! 親がボケたみたいなんですけど…… 」(祥伝社)が大きな話題となっている。

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