朝8時半ごろから体操が始まり、45分から15分間歌います。いつも30人ほどの患者さんが集まっていました。ある週では歌詞を150部印刷しても足りないこともあったようです。
1995年末にI医師は故郷で開業することになりました。当時、化学療法科(現腫瘍内科)の部長だった私は、I医師から「この会を安心して続けるには、傍らに医師がいる必要がある」との相談を受け、歌が好きだったこともあってI医師の後を継ぎました。
歌の会は、毎週毎週続きました。福島県から来られたある男性の患者さんは食道がんで手術後の放射線治療で2回目の入院でした。以前、一緒だった患者さんと再会され、うれし涙を流しながら「ふるさと」を追加リクエストして歌っていました。
入院期間が長かった時代ですから、退院が決まったことへの喜びを表す方もいれば、同室で亡くなった方を鎮魂したり、点滴を引きずってエレベーターを乗り継いで参加される方など、一人一人の思いは違います。同じなのは皆さん歌が好きな方々でした。
がんと向き合い生きていく