がんと向き合い生きていく

かつて患者が自主的に集まって合唱する「歌の会」があった

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 朝8時半ごろから体操が始まり、45分から15分間歌います。いつも30人ほどの患者さんが集まっていました。ある週では歌詞を150部印刷しても足りないこともあったようです。

 1995年末にI医師は故郷で開業することになりました。当時、化学療法科(現腫瘍内科)の部長だった私は、I医師から「この会を安心して続けるには、傍らに医師がいる必要がある」との相談を受け、歌が好きだったこともあってI医師の後を継ぎました。

 歌の会は、毎週毎週続きました。福島県から来られたある男性の患者さんは食道がんで手術後の放射線治療で2回目の入院でした。以前、一緒だった患者さんと再会され、うれし涙を流しながら「ふるさと」を追加リクエストして歌っていました。

 入院期間が長かった時代ですから、退院が決まったことへの喜びを表す方もいれば、同室で亡くなった方を鎮魂したり、点滴を引きずってエレベーターを乗り継いで参加される方など、一人一人の思いは違います。同じなのは皆さん歌が好きな方々でした。

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佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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