がんと向き合い生きていく

かつて患者が自主的に集まって合唱する「歌の会」があった

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 しかし、患者が中心となり、患者が自主的に集まって歌う会は他にはあまり聞きません。このような歌の会の復活はとても無理なのですが、何かとても大切なものを、大切な仲間を失ったような気がしています。

 事務のAさんが「再開する時のために」と残してくれた歌詞集が今も私の手元にあります。「ノスタルジア」だと嘲笑されそうですが、「どこかで春が」「みかんの花咲く丘」「あざみの歌」「里の秋」など、偶然、知らない患者同士が一緒に歌った曲目は658曲に上ります。

 あの頃、病気と闘い、泣いて、笑った「歌う仲間」がいたのです。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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