役に立つオモシロ医学論文

肥満に悩む英国で調査“レジ横”菓子の売り上げと健康の関係

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写真はイメージ(C)PIXTA

 スーパーマーケットでは季節などに応じて、食料品の陳列場所がよく変わります。消費者の購入を促す販促戦略の一つです。特にレジ周辺には、衝動買いを狙ってチョコレートやガムなどの菓子類が陳列されていることが多いようです。

 英国では肥満が大きな社会的問題になっており、一部のスーパーマーケットではレジ周辺の菓子類陳列をやめているそうです。糖分やカロリーの高い菓子類の購入を控えさせることで、消費者の食習慣改善効果を期待した販売方針です。では、実際どのような効果が得られたのでしょうか。

 英国における食料品の購入状況に関する大規模調査の結果が、「プロス・メディスン」という米国の科学誌に2018年12月18日付で掲載されました。

 この研究では、レジ周辺に菓子類などを陳列していないスーパーマーケット6社と、通常の陳列を行っているスーパーマーケットを比較して、陳列中止12カ月前後の食品購入状況を調査しています。約3万世帯の食料品購入状況を分析したところ、レジ周辺の菓子類陳列中止後4週間で、菓子類の売り上げが17・3%低下し、この減少効果は1年間持続したことが示されました。

 さらに、菓子類を購入後、自宅に持ち帰らずに外で食べる7500人を調査したところ、レジ周辺に菓子類を陳列しない店を利用した人は、陳列した店を利用した人に比べて、小袋菓子類の購入が年間で76・4%、統計学的にも有意に少ないことが示されました。

 もちろん、売り上げが低下したからといって、消費者の健康状態が改善したことにはなりません。それでも、お店側の食料品陳列方法が食習慣に大きな影響を与える可能性が示唆されています。

青島周一

青島周一

2004年城西大学薬学部卒。保険薬局勤務を経て12年9月より中野病院(栃木県栃木市)に勤務。“薬剤師によるEBM(科学的エビデンスに基づく医療)スタイル診療支援”の確立を目指し、その実践記録を自身のブログ「薬剤師の地域医療日誌」などに書き留めている。

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