患者が語る 糖尿病と一生付き合う法

低血糖で意識障害だからこそ 低血糖を断固認めない

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 低血糖で、それまでにもちょくちょく彼女の厄介になっており、そうならないようにこれからは気をつけると約束していた手前、結果としてまた意識障害を起こしてしまったとあれば、申し開きが立たない。認めたくないのである。

 言うまでもなく、そのとき問題なのは僕の面目などではない。放置すれば最悪、命の保証すらないのだから、とにかく一も二もなく補食すべきなのだ。しかし当の僕は、意識障害を起こしている。今、一番大事なのは何か、それすらわからなくなっている。

 言われるまま補食したとしても、「もう十分なはず」と途中でやめてしまうこともあった。それにも一応の理由はある。低血糖に対処しようとして補食すると、反動でその後、極端な高血糖に転じてしまうことがよくある。僕はたぶん、それを警戒していたのだ。

 意識障害下の僕は、そのように半端に小ざかしいのがまた手に負えなかったらしい。

2 / 2 ページ

平山瑞穂

平山瑞穂

1968年、東京生まれ。立教大学社会学部卒業。2004年「ラス・マンチャス通信」で日本ファンタジーノベル大賞を受賞。糖尿病体験に基づく小説では「シュガーな俺」(06年)がある。

関連記事