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採血で異常値も 肝細胞の破壊度がわかる「AST」と「ALT」

採血の影響も(C)日刊ゲンダイ

 ASTは心筋や筋肉、赤血球などにも含まれる一方、ALTはほかの臓器にほとんど含まれません。そのため、肝臓の破壊をより鋭敏に反映するのは、ALTです。ですから、ASTが高く、ALTが正常に近いときは、たとえば心筋梗塞やうっ血性心不全など心臓の異常が疑われます。

 一般に肝硬変は、肝臓の慢性的な炎症によって肝細胞が線維化して硬くなった状態。その肝硬変でいうと、初期は「AST<ALT」で、中期以降は「AST>ALT」。どちらも高いときは肝臓の異常が濃厚ですが、ALTがより高いときほど、早期の傾向があります。すべてに当てはまるわけではなく、あくまでも傾向ですが、2つの関係が逆転する前に治療することが大切です。

「AST<ALT」は、胆汁のうっ滞などでも見られます。いずれにしてもALTの高値を見逃してはいけません。

 採血の針が細かったり、採血の量が少なかったりすると、赤血球が壊れる溶血になることがあります。そのときもASTなどは上昇しやすい。また、採血時に腕に巻くゴムバンドで締めつける時間が長い時も、数値が上がりやすい。肝炎ウイルスの感染や飲酒習慣がなく、数値が上昇しているときは、採血の影響かもしれません。

(梅田悦生・赤坂山王クリニック院長)

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