病み患いのモトを断つ

吉川晃司は復活 声帯ポリープは「衛生教育」で6割が消滅

吉川晃司
吉川晃司(C)日刊ゲンダイ

「ポリープさんはいなくなりました」

 おちゃめなコメントでファンの笑いを誘ったのは、大ヒットドラマ「下町ロケット」での部長役がクールと評判の俳優・吉川晃司(53)だ。声帯ポリープで1年に及ぶ歌手活動の休養を余儀なくされたが、今月1日、日本武道館で行われた35周年ライブでミュージシャンとして復活。「超満員に集まっていただき、感謝感激」とご機嫌でステージに立った。

 のどを痛めたのは2016年春。翌17年7月に左側声帯ポリープと診断され、一時は手術も考えたと報じられただけに、「ざまーみろ! あのヤロー、しつこかったのよ」と喜びを爆発させたのも無理はないだろう。定期的に通院しながら状態を確認しているうちにポリープが消滅。その間、薬は服用しなかったそうだ。

 声帯ポリープは、カラオケ好きや運動部の学生など日ごろから大声を出す人にもできることがある。ミュージシャンでなくても、声が出なくなったら大変だ。普通の人は1年も仕事を休むわけにはいかない。どうやって対処するか。聖路加国際病院内科名誉医長で、「西崎クリニック」院長の西崎統氏に聞いた。

■手術なら全身麻酔で

「一般論として声帯ポリープが服薬せずに治ることは少ない。手術で切除するのがセオリーです」

 声帯は、左右2本のヒダ状になっていて、そこを通る空気を振動させることで、声が出る。無理に大声を出したり、風邪や喫煙、飲酒などによってのどに炎症があると、声帯の粘膜が充血してむくむ。その状態で、さらに声帯を酷使すると、粘膜の血管が破れて、血腫ができる。血腫によって声帯の筋肉組織が盛り上がったのが、声帯ポリープだ。

「いわゆる“酒やけ”でダミ声の人がたばこを吸い、酔った勢いでカラオケを歌うような生活が、声帯ポリープに直結します。たとえば、ビールを飲みながらスポーツ観戦して、大声で応援していると、声が出にくくなることがあるでしょう。あれは、声帯がむくんだ状態です。その程度なら、自然治癒はありえます」

 声帯ポリープと同じような症状を起こす病気に声帯結節がある。結節は声帯の表皮細胞が厚くなったもの。ポリープは左右どちらかにできるのが一般的だが、結節は両方にできることが多い。いずれにしても、治療は耳鼻科で行う。もし手術となると、全身麻酔でラリンゴマイクロサージェリーという顕微鏡下の手術を行う。

「営業マンや教師など声を出すことが不可欠な人は手術をすべきです。しかし、発声方法や生活習慣が発病の原因。そこを改善しないと、手術後に再発する恐れがある。声の衛生教育が欠かせません」

 たとえば、広い会場で資料を読み上げるようなときは大声ではなく、マイクを使う。得意先と食事するときは、声が通りにくい騒がしい店ではなく、静かな店を選ぶ。のどを乾燥させず、ほこりっぽい場所は避ける。風邪などでのどが荒れていたら、カラオケは控えるといった具合だ。

 東京医療センター感覚器センターが2015年2月~17年3月に声帯ポリープなどで手術を受ける予定だった患者200人を対象に、声の衛生教育の効果を調査している。個別に指導を受けた75人のうち61%はポリープなどがなくなり、症状が改善したが、注意喚起だけの95人の改善率は26%だったという(途中で手術したりがんが見つかったりした30人は除外した)。

 声の衛生教育の効果は歴然。声に違和感がある人は、耳鼻科でレクチャーを受けることだ。

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