性感染症最前線

淋菌<1>男性感染者の95%に症状が出る性感染症の「王様」

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

「先生、ペニスの先から黄色い膿(うみ)が出てきました。オシッコのし始めに痛みがあります。最近、風俗に行ったので病気をもらったようです」

 ある男性が性病を疑い、医療機関を受診したときのひとコマ。「淋(りん)病」と呼ばれる「淋菌性尿道炎」の典型的な症状だ。男性の性感染症では、クラミジアに次いで発症が多い。性感染症専門施設「プライベートケアクリニック東京」(新宿区)の尾上泰彦院長が言う。

「男性がクラミジアに感染して症状が出る人は約50%ですが、淋菌は約95%の人に症状が出ます。それに男性の淋菌性尿道炎は症状が激しく、誰が見ても症状がはっきり分かるので『感染症の王様』とも呼ばれています」

 尿道口から出るクリーム状の膿と、排尿初期痛。尿道口が赤く腫れることも多い。また、感染から症状が出るまでの潜伏期間がクラミジア(1~3週間)に比べて短く、2~7日で症状が出るので性交に心当たりがあればうつされたことが分かりやすい。これらの点が該当すれば、ほぼ淋病であることは間違いない。しかし、専門医を受診しないと治療をしても尿道炎がなかなか治らない場合がある。感染している病原体が淋菌だけとは限らないからだ。淋菌とクラミジアは同居しやすいという。

「潜伏期間が短く症状の激しい淋病は、尿道炎の原因菌ではボス的な存在。クラミジアも感染している場合、ボスがいる間はおとなしくしています。そして、治療で淋菌がいなくなると、『次は俺の出番』とクラミジアの症状が出てくるのです。このような淋菌治療後の非淋菌性尿道炎が30%くらいみられます」

 専門医であれば両方の遺伝子検査をしておき、淋菌(注射)とクラミジア(服薬)の治療を一緒に行うという。淋病の治療に注射薬を使うのは、服薬に対する耐性菌が多いためだ。

 ただし、ここまでの話は男性の淋菌性尿道炎のケース。女性の場合では淋菌の多くは尿道でなく、子宮頚管に感染する。そのため症状(淋菌性子宮頚管炎)が出る人の割合は、クラミジアと同じで20~30%程度。症状は、膿性のおりもの、不正出血、下腹部痛だが軽いので気づきにくい。

「女性の淋菌性尿道炎も尿道口から排膿があり、排尿時痛もあります。女性に多い膀胱炎との違いは、排尿中のいつ痛いか。膀胱炎はオシッコが終わるとき、尿道炎はし始めに痛みが出ます」

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