夜間半日断食でやせるワケ 1年半で20kg減の研究者が語る

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 ダイエットに成功しない理由は「意志が弱いから」ではない。太るメカニズムを知らずにダイエットに挑むからだ。無理なくやせるにはどうすればいいのか? 自ら20キロの産後太りを1年半で解消し、「食べる時間を変えれば健康になる」(ディスカヴァー携書)の著者で早稲田大学持続型食・農・バイオ研究所重点領域研究機構招聘研究員の古谷彰子氏に話を聞いた。

■太るメカニズムを誤解している

「太るのは消費を上回るカロリーを摂取しているからですが、どんなに食べても体重が100キロを超える人はマレです。それは食欲をつかさどったり、脂肪細胞を増殖したり、脂肪細胞にエネルギーを搬入・蓄積したりするホルモンが、食べる時間と密接に関わっているからです」

 その意味では朝食抜きや早朝トレーニングといった努力が減量につながるとは限らない。

「私たちの体の中には体内時計と呼ばれる一日のリズムを刻むメカニズムがあり、日々狂いが生じます。朝日と朝食はそれをリセットする役割があります。朝食抜きは体内時計が乱れ、肥満や病気が生じるもとになる可能性があります。また、マウスの実験などで朝より昼から夜の運動が効果的で、食前より食後の方がダイエット効果が高いことがわかっています」 

 そもそもやせられない人の多くが太るメカニズムを誤解しているという。

「体内は恒常性を保つために摂取エネルギーを減らすと消費エネルギーを抑えようとします。例えば摂取エネルギーは身体運動以外に体温や心拍数の維持、タンパク質の合成、骨や筋肉の形成、呼吸、排泄などに使われますが、摂取エネルギーを減らすと身体の代謝活動が低下。体が冷えたり、動かなくなるなど安静時の代謝量が減るのです。よく“食べなければやせる”と言う人がいますが、食べない生活を継続することができない限り、リバウンドを引き起こしてしまう危険性があります」

■インスリンの急激な分泌過剰を防ぐことが大切

 太る食べ物についても誤解がある。かつては肉やバターなどの動物性タンパク質や脂質の過剰摂取が太る原因といわれていた。

 しかしいまは分解された糖質が注目され、インスリンがその蓄積などに関係するとされる。

「誤解されたのは肉やバターの方が1グラム当たりの熱量(カロリー)が大きかったからですが、脂質として体内に蓄積するのは糖質の方がはるかに多いのです」 

 食べ物は胃や小腸で分解され、タンパク質はアミノ酸に、脂質は脂肪酸に、炭水化物はグルコース(ブドウ糖)に分解される。ブドウ糖は小腸から血液に吸収され血糖となり、一部は肝臓に蓄えられ、その後は全身に血液を通して送られ、エネルギー源として利用される。血糖を肝臓や筋肉、脂肪細胞に取り込むときに必要なホルモンがインスリンなのだ。 

 一方、食後血液中の糖とインスリンが減ると脳や筋肉などでは糖が不足する。すると肝臓がグリコーゲンを分解して糖に変え体内を循環させる。

「つまりインスリンとはエネルギー産生や脂肪の貯蔵を促進させる基本的なホルモンなのです」 

 実際、インスリン注射が必要な糖尿病患者の体重は増えることからもインスリン分泌量が過剰となると、肥満を引き起こしやすくなると言える。

「やせたいならインスリンの急激な分泌過剰を防ぐ工夫が必要です。血糖値が急激に上がる食べ物や食べ方を改めなければなりません。血糖が急激に上がることでインスリンが大量に分泌され、肝臓や筋肉、脂肪細胞にブドウ糖を蓄えようとするからです」 

 血糖を急激に上げない方法は、血糖値を急激に上げにくい食品を食べたり、食物繊維の豊富な野菜を先に食べて糖の吸収を遅らせる方法などがある。しかし、一番手軽なのはダラダラ食べ続けることをやめ、食事を取らない時間をキチンと確保することだ。 

「食事を取らなければインスリンの分泌が減り、不足した糖分を補うためにグリコーゲンや脂肪が燃やされる時間が長くなります。結果としてやせるのです」 

 しかも、インスリン抵抗性が是正され、インスリンの分泌量は減る。ならば昼間食べずに、夜食べてもいいのか? 

「それはいけません。正しくは夕食から翌日の朝食の間を12時間以上保つことです。夜間の食事は睡眠の質を下げ、睡眠中に行われる細胞の修復などにマイナスです。しかも、睡眠中は副交感神経が優位に働き、胃腸の動きが活発なため睡眠直前の食事は吸収力を増し太りやすくなります。その代わりに、良質な睡眠後には朝日をたくさん浴び、バランスの良い朝ごはんをしっかり取ってください。インスリンの分泌も体内時計と関係することがわかっています。体内時計のリズムを正すことも肥満を解消するための第一歩となります」

 古谷氏は午後7時夕食、午前7時朝食、正午昼食という食事スケジュールを厳格に守るなどして20キロ以上の産後太りを1年半で解消したという。

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