歯周病を放置する恐怖 膵臓がんリスクが上昇し2倍以上に

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 歯科の健康は全身の健康につながる――。かつてから言われてきたが、最近のトピックスとして注目なのは、エビデンス(科学的根拠)が出てきたことだ。鶴見大学歯学部探索歯学講座教授の花田信弘教授は「国立循環器病研究センターの発表では、歯周病はすべての臓器に影響を与える。疫学的には分かっていたが、10年前はエビデンスが足らないと言われていた。それが今、かなりのエビデンスが出てきた」と話す。

 歯周病が臓器の健康を損なうのは、ひとつは、歯を失うことで食物を噛みにくくなり、栄養低下につながること。そしてもうひとつは、ポルフィロモナス・ギンギバリス菌(以下、ギンギバリス菌)をはじめとする歯周病菌などの口腔細菌が全身を駆け巡り、さまざまな臓器にダメージを与えることだ。それは非常に多岐にわたる。

「たとえば、歯周病菌を保菌していると膵臓がんの発症リスクが高くなります」(花田医師)

 ギンギバリス菌であれば1・6倍。別の歯周病菌であるアグリゲイティバクター・アクチノミセテムコミタン菌であれば2・2倍。膵臓がんは非常に生命予後が悪いがんとして知られる。

 なお、歯周病は疫学上ではすべてのがんのリスクを上げるとされている。つまり、歯周病対策は、膵臓がんだけでなく、あらゆるがん対策になる。

 また歯周病は、高血圧、心筋梗塞、脳卒中などのリスクを高める動脈硬化にも関係している。さらに、アルツハイマー型認知症のリスクも高める。

「ギンギバリス菌によって誘発される歯周炎は、脳のアミロイドβの沈着、脳の炎症を誘発するメカニズムによって、認知障害の増強をもたらす可能性があります」(花田医師)

 ここに挙げた病気は一例に過ぎない。歯周病対策が命やQOL(生活の質)ににかかわる重大病の予防につながるなら、やらない手はない。2019年は、歯磨きやデンタルフロスなどの日頃の口腔ケアはもちろんのこと、歯科医院での歯周病チェックと定期的なメンテナンスを徹底するようにしてはいかがだろう。

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