天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

カテーテル治療のマイトラクリップは循環器内科が主導を

順天堂大学医学部付属順天堂医院の天野篤院長(C)日刊ゲンダイ

 昨年9月、東大病院で行われた「マイトラクリップ」という最先端のカテーテル治療を受けた41歳(当時)の男性が亡くなる事故がありました。その患者は拡張型心筋症と僧帽弁閉鎖不全症を抱えていて、心臓の中にある僧帽弁がうまく閉じなくなって血液が逆流する状態を改善するために行われた治療でした。

 前回も説明したように、マイトラクリップは先端にクリップの付いたカテーテルを下肢の静脈から挿入して左右の心房間を通過させてから僧帽弁に到達させ、ずれてうまく閉じなくなっている2枚の弁の両端をクリップで留める治療法です。

 マイトラクリップが登場する以前の僧帽弁閉鎖不全症に対する治療は、まず薬物治療で経過を観察し、不整脈や心不全といった自覚症状が出たり、2枚の弁をつないでいる「腱索」という線維組織が切れて弁がそっくり返ってしまっているような重症な状態が心臓エコー検査でわかった段階で外科手術を行うのが一般的でした。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

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