長く続く白い便と茶色の尿…胆道がんのサインを見逃すな

体全体がかゆくなる
体全体がかゆくなる(C)PIXTA

 胃のバリウム検査を受けたわけではない。にもかかわらず「クリーム状の白っぽい便」や「薄い黄色の便」が続いている。しかも「濃い茶色の尿」も出て皮膚もかゆい。そんな中高年は病院で検査を受けた方がいい。便は健康のバロメーター。白い便には恐ろしい病気が隠れている可能性がある。日本消化器内視鏡学会内視鏡指導医で国際医療福祉大学病院内科学の一石英一郎教授に聞いた。

「白い便が出た患者さんで多いのは胆管結石症などの結石による病気です。時々右の肋骨下辺りが痛むことがある人はその可能性が高い。2番目はがんです。胆管がん、胆のうがん、乳頭部がんなど胆汁の通り道である胆道にできるがんか、肝臓がんなどが疑われる。あとはノロやロタウイルスなどの感染症が考えられます」

 健康な人の便の色は茶色や黄色だ。それは肝臓で作られる胆汁が便に混じるからだ。胆汁には胆汁酸と呼ばれる消化酵素とビリルビンという黄色の色素が含まれている。それが便を染めることで便に色がつくのだ。白い便が出るのは胆汁が便に混じらず、便がビリルビンで着色されないから。その原因は、胆汁が流れる経路(肝臓から十二指腸まで)のどこかが狭くなったり閉塞したりして胆汁の流れが止まったか、胆汁を作る肝臓の能力そのものに問題があるかだ。

「胆汁は流れが止まって肝臓内に蓄積していくとビリルビンが血液に逆流し、血液中のビリルビン濃度が上がります。その結果、皮膚や目の白目など体全体が黄色に染まる。これが黄疸です。黄疸になると黄疸尿といって濃い茶色の尿に変わるほか、胆汁内の胆汁酸がビリルビンとともに血液中に流れ出るようになり体全体がかゆくなります」

 つまり長く続く白い便は黄疸と同じで、胆汁の経路や肝臓などの異常を知らせるサインなのだ。

「ただし、白い便は子供などのようにウイルス性の腸炎でもあらわれます。黄疸や黄疸尿、皮膚のかゆみがなく、周りに同じような白い便が出ている人がいて、数日でそれが正常な便に治るようならウイルス性の腸炎の可能性が高いといえます。逆に自分だけ白い便が何日も続き、黄疸尿やかゆみが出るようなら胆石やがんを疑う必要があります」

 胆汁の通り道にできるがんの総称である胆道がんは、胆管がん、胆のうがん、乳頭部がんに分かれる。数が多いのが胆管がんと胆のうがんだ。胆管は肝臓から十二指腸までの胆汁の通り道で、長さ10~15センチ、太さ0・5~1センチの臓器。一方、胆のうは胆汁を一時的に保管する袋で、食事をすると胆汁を十二指腸に放出し消化を助ける。

「胆管がんは胆管の内側の表面を覆う粘膜にできる悪性腫瘍です。一方、胆のうがんはこの袋の部分にできるがんで、とくに発症しやすいのは、先天的に膵胆管合流異常がある人です。膵管と胆管が十二指腸の手前で合流し、膵液と胆汁が逆流し問題を起こすからです」

■初期の段階では無症状

 2016年2月集計の全国がん(成人病)センター協議会の生存率共同調査によると胆管・胆のうがんの5年生存率は1期60.1%、2期26.7%、3期17.3%、4期2.9%と極めて厳しい。早期発見した場合を除いて有効な治療手段が確立されていないからだ。しかも、胆管・胆のうがんなどは自覚症状が乏しく、早期発見自体が難しい。

 日本肝胆膵外科学会編の「胆道癌診療ガイドライン」(改訂第2版)によると、胆道がんを疑う症状は「黄疸」「右上腹部痛」「体重減少」などだが、初期は無症状だという。胆管がんは欧米からの報告では84~90%は黄疸で見つかるが、日本では半数にすぎず、25%は腹痛から見つかるという。胆のうがんは右上腹部痛が50~80%と最も多く、黄疸、悪心・嘔吐、体重減少と続く。乳頭部がんでは黄疸が72~90%と最も多いが、黄疸がなければ腹部エコー、上部消化管内視鏡検査で偶然発見されることがある。

「胆管がんにはCEAやCA19―9などの腫瘍マーカーがありますが、早期発見にはつながりにくい。CEAは大腸がんの腫瘍マーカーとして発見された最も古い腫瘍マーカーで、食道、胃、肺などのがんでも数値が上がります。ただし、良性腫瘍や慢性肺気腫、糖尿病、肝炎などでも異常な数値を示します。CA19―9は膵がん、胆管がんの診断に適していますが、日本人の1割は生まれつきこの物質を作ることができず、他のがんでも数値が上昇することがあります」

 正確な診断を得るにはCTやMRIなどの検査のほかに、超音波内視鏡などを扱える消化器専門の医療機関で診てもらう必要がある。それにはまず、胆管・胆のうがんを疑い、病院で診てもらうキッカケが必要となる。

「黄疸はその大きな手掛かりのひとつです。しかし、程度が軽いとなかなか気づきません。むしろ便の色が白くなってはじめて症状に気づく人もいるのです」

 だからこそ白い便には十分注意すべきなのだ。

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