後悔しない認知症

「死にたい」という親に「そんなこと言うな」は禁句です

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

「早くお迎えがきてほしい」

「生きていてもしかたがない」

 高齢者の中にはしばしばこんな言葉を口にする人がいる。こう言われるのは、子どもにとってはつらいことだ。もともと物事に対して悲観的な感情を抱きやすい人は、老化あるいは認知症発症によって、感情をコントロールできなくなると、こうした言葉を口にする傾向が強くなる。脳の老化や認知症の影響による、性格の「先鋭化」である。ただ、その原因が「老人性のうつ」である場合も多い。いずれにしても、経験の豊富な精神科医の診察を受けさせるべきだろう。

 認知症はともかくとして、老人性うつの場合は投薬によって症状がドラスチックに改善することが少なくないのだ。

■真正面から現実を受け止めること

 では、認知症によって「死にたい」の頻度が増えたようなケースでは、どう対応すべきだろう。高齢の親のそうした発言の原因はいくつか考えられる。「近親者や友人の死」「認知症以外の病気」「ペットロス」「体力低下」「意欲の低下」「生き甲斐の喪失」などさまざまだが、子どもが心得るべきは「親が『死にたい』を口にするほどつらいことがある」という現実を真摯に、真正面から受け止めることだ。仮に子どもの側に心当たりがまったくなかったとしても、である。

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和田秀樹

和田秀樹

1960年大阪生まれ。精神科医。国際医療福祉大学心理学科教授。医師、評論家としてのテレビ出演、著作も多い。最新刊「先生! 親がボケたみたいなんですけど…… 」(祥伝社)が大きな話題となっている。

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