がんと向き合い生きていく

医療者にすべてお任せするのではなく「賢い患者」になろう

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 前回も紹介しましたが、辻本さんは乳がんと胃がんを患いました。胃がんとがん性腹膜炎が進行した時、「私はがんばりたい。私は最期まで治療を受けて、望みを捨てたくない」と最期まで闘いました。

 2011年5月、私がCOMLを訪れた際、辻本さんは食事が取れず、中心静脈栄養で車いすに乗って笑顔で迎えてくれました。その時、そばにいたのが山口育子さんです。25歳を目前に卵巣がんを発症し、1年半に及ぶ抗がん剤治療の中で、医療現場におけるコミュニケーションと患者の意識変革の必要性を痛感したことがCOMLとの出合いにつながったそうです。

 山口さんは、一生懸命に辻本さんをサポートされてきました。辻本さんが胃がんになってからも、彼女の慈愛、強さ、ひたむきな姿勢で、一緒になってがんと闘ってきたように思います。しかも、私がCOMLを訪れたその時、なんと山口さんは2回目の卵巣がんが分かり、手術が予定されていたのです。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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