がんと向き合い生きていく

医療者にすべてお任せするのではなく「賢い患者」になろう

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 山口さんは、それからも見事に立ち直り、11年6月からCOMLの理事長となって辻本さんの後を継がれました。20年間、辻本さんとの密度の濃い二人三脚だったといいます。

■医療を正しい方向に修正できる人々はたくさんいる

 現在、山口さんはCOMLの仕事だけでなく、患者の立場から医療のあり方、医療倫理のあり方などについて経験に基づいた意見を述べられ、八面六臂の大活躍です。特定機能病院の医療安全監査委員会では8病院で委員を務め、ある大学病院では医療安全監査委員長を務められています。さらに患者・市民の声が求められる風潮から、「医療をささえる市民養成講座」なども開催されています。

 この活躍は山口さんの天命だったのだと私は思っています。山口さんはもちろん大変な才能の持ち主ですが、思わぬ環境、思わぬ運命がさらに人を育てていく……そんな“理”を強く感じました。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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